「裏金」に関係し、落選した自民党の元議員たちの投稿。敗北への謝罪や支援への感謝を述べる内容が大半だ=Xから

 「政治とカネ」の問題に注目が集まった今回の衆院選では、「裏金」問題に関与した自民党の前議員46人(うち2人は既に離党)のうち、実に6割の28人が落選した。

 比例代表との重複立候補が認められなかった「背水」の候補者たちは選挙期間中、街頭のみならず、SNS(ネット交流サービス)でも必死の「訴え」を発信し続けた。

 だが、選挙後のSNSを見てみると、その姿勢は二分されている。つぶやきを調べてみた。

大半が支持者向けの「お礼」に終始

 落選した28人について、X(ツイッター)▽フェイスブック▽インスタグラム――の3ツールを見たところ、全員がいずれかで選挙期間中に発信をしていた。

 では27日の投開票後はどうか。29日夜までに何らかの投稿を確認できたのは18人だった。

 内容は、大半が「ご支援をありがとうございました」というお礼。「期待に応えられず申し訳ありません」「私の不徳の致すところ」「全責任は私にあります」という、支持者向けの陳謝の言葉も多く並んだ。

 ただ、18人中16人は「裏金」に言及していない。

「助けてください」のあの人は…

落選が確実となり、厳しい表情で支持者にあいさつする丸川珠代氏=東京都港区で2024年10月27日午後10時18分、玉城達郎撮影

 東京7区で落選した丸川珠代氏(53)は28日、インスタグラムに「あたたかいご支援をありがとうございました」という短文付きの動画をアップした。

 選挙期間中の22日には、Xに3回のポストを載せたが、返信欄に「裏金」「応援しません」といった批判的なコメントが殺到。Xはそれ以降、更新されていない。

報道陣の取材に答える高鳥修一氏=新潟県上越市新光町で2024年10月10日、中津川甫撮影

 いっぷう変わった内容を投稿したのは、新潟5区で立憲民主党前職に敗れた高鳥修一氏(64)。28日夜、Xに「私のことを心配してのメールをいくつか頂いていますが、私は皆さんが、がっかりするほど元気です」と投稿した。

 「新聞はわざと私が半分目を閉じたような写真を使って『虚(うつ)ろな表情』と書きましたが『味付け』された感じです」とも付記している。

「裏金」言及は2人

 大半が「裏金」に沈黙したり言及を避けたりする中、わずかでも触れたのは2人だった。

 岩手3区で立憲の小沢一郎氏(82)に敗れた藤原崇氏(41)と、「裏金」で非公認となり無所属で埼玉6区に出馬した中根一幸氏(55)だ。

 藤原氏は28日未明、「政治資金、党青年局に関する一連の問題や、<中略>期待に応えることができなかったこと、深くお詫(わ)びを申し上げます」と記した画像をXに載せた。

 3月に自民党和歌山県連主催の会合で、露出の多い衣装の女性ダンサーを複数招いていた問題が発覚し、参加していた藤原氏は党青年局長を辞任していた。「裏金」と併せて「謝罪」した内容だ。

 同じく「裏金」に言及した中根氏は29日午後、フェイスブックに長文を投稿。「自身の、そして、自民党の、(政治資金収支報告書の)不記載をはじめとするさまざまな問題に端を発し、大変厳しい選挙戦でありました」と記した。

選挙後に「沈黙」は10人

 一方、選挙中にはSNSで何らかの発信をしつつ、落選すると「沈黙」状態になったのは10人。

 例えば丸川氏の夫で、埼玉9区で落選した大塚拓氏(51)。Xは選挙戦最終日の26日夜に「一票をお願いします」と動画付きで投稿した後、更新されていない。

 ほかにも、14回目の当選を目指した大分2区の衛藤征士郎氏(83)は、選挙期間中こそ政策や投票の呼びかけを書き込んでいたが、26日の投稿が最後になった。

 東京1区で激戦の末に敗れた山田美樹氏(50)も、選挙期間中は一日に何回も投稿を重ねていたが、26日をもって途絶えている。

他にやることも

 インターネット上での選挙運動が解禁されたのは2013年。今やXやインスタグラムにとどまらず、ユーチューブやTikTokを駆使するのは当たり前だ。

 なお、衆議院事務局によると、落選した元議員は、議員会館(東京・永田町)の部屋から「開票日の翌日以降4日以内」の退去が求められている。選挙が終わった今、SNSより引っ越しに追われているのかもしれない。【春増翔太、斎藤文太郎】

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