FNN(フジニュースネットワーク)と産経新聞が20、21日両日に実施した世論調査で、岸田文雄内閣の支持率は前回比3・7ポイント増の26・9%だった。他社の調査でも「微増もしくは横ばい」。前週の調査も同様の傾向だったので、どうやら支持率の下落は底を打ったようだ。
気になったのは政党支持率で、FNN・産経、読売新聞、朝日新聞、毎日新聞のいずれも自民党は上がり、立憲民主党と日本維新の会はほぼ下がる傾向だ。なぜなのか。
内閣支持率が上がるのは分かる。岸田首相の国賓訪米の評価が高いからだ。FNN・産経では「大いに」「ある程度」を合わせて55・5%が評価し、「評価しない」(37・4%)を上回っていた。読売新聞、朝日新聞も同じ傾向だった。
だが、自民党の支持率が上がった理由が分からない。自民党議員から「岸田首相でなく、自民党がダメだと言われる」と聞いていたからだ。
1つ面白いと思ったのは、政治資金をめぐる自民党の処分について、ざっくり聞くと評価する人は1割から2割しかいないが、「安倍派幹部の塩谷立氏と世耕弘成氏への離党勧告」など具体的な厳しい処分に触れて聞くと、読売調査で「妥当だ」が47%となっている。
つまり保守層の中には、自民党の処分を評価して、いったん離れた後に、少し戻っているのかもしれない。あるいは自民党は嫌いだが、野党にもそれ以上に魅力を感じていないのか。
だからといって、岸田首相は気楽に解散してはイカン。
28日投開票の衆院3補選は、各社の記事を読む限り、「自民党劣勢、立憲民主党優勢」のようである。自民党が島根1区で逆転勝ちして衆院解散とか、あるいは全敗でも「これでお仕置きは終わった」などと岸田首相が勘違いして解散という説があるのだが、やめた方がいい。
というのは、今回の調査で、自民党にとって恐ろしい結果が1つあったのだ。
次期衆院選後の政権のあり方を聞いたところ、FNN・産経は「政権交代を期待」が52・8%で、「自民党中心の政権継続」が40・1%。毎日新聞に至っては、62対24で政権交代に期待する声の方が多かった。
これは1993年と2009年の政権交代時の「自民党はもうイヤ」という国民の「気分」に似ている。あの時との決定的な違いは、次にどういう人たちに政権を任せるか、今回まだ国民は決めていない、ということだ。
だからといって、「政権を担当できるのはどうせ自民党だけ」「顔を変えれば何とかなる」などの軽い気持ちで解散はしない方がいい。少なくとも、国民は「自民党はもうイヤ」という気分なのだから、何かのきっかけで地殻変動が起こるかもしれない。
もう一つ、岸田首相の外交成果は評価されている。安保、エネルギー、経済など時々間違えることはあるが、政策はそんなに悪くないと思う。だから自民党の人たちは間違っても「岸田降ろし」をしてはダメだ。
9月の総裁選で、岸田首相も含めて政策論争をして総裁を決め直してから、解散するかしないかは決めればいい。国民の「気分」を甘く考えてはいけないと思う。(フジテレビ特別解説委員 平井文夫)
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