自民党の森山裕幹事長と国民民主党の榛葉賀津也幹事長は31日、国会内で会談し、政策協議を開始する方針で一致した。少数与党となった自民側が、11月中に取りまとめる経済対策や対策の財源となる2024年度補正予算案、25年度予算案などへの協力を呼びかけた。年収が103万円を超えると所得税が発生する「年収の壁」の引き上げや、ガソリン税の一部軽減などの国民民主の要求を、与党側がどこまで受け入れるかが焦点となる。(近藤統義、坂田奈央)

国民民主党の玉木代表(左)と自民党の石破首相=いずれも10月31日(佐藤哲紀撮影)

 「国民の懐を豊かにすることを最優先に考えていきたい。全くやらないのであれば、当然協力できない」  国民民主の玉木雄一郎代表は31日の記者会見でこう強調し、衆院選公約で掲げた「103万円の壁」の解消など手取りを増やす政策が実現できなければ、予算案や法案の成立に協力しない考えを示した。

◆103万円の壁、玉木氏は「ゾンビ税制」と批判

 会社員やパートなどの給与は、給与額面から一定額を差し引く基礎控除(最高48万円)や給与所得控除(最低55万円)がある。この控除額の合計103万円を超えると、所得税が課税される。働き手側がこのラインを意識して労働時間を抑制することで、人手不足に拍車をかけていると指摘される。  103万円の控除額は1995年から据え置かれ、玉木氏は「ゾンビ税制」と批判する。1995年からの最低賃金の上げ幅に合わせ、控除額の178万円への引き上げを主張、減税額を年収200万円の人は8万6000円、年収500万円の人は13万2000円と試算する。  税法に詳しい青山学院大の三木義一名誉教授は「基礎控除は憲法の生存権を反映したもので、賃金や物価の上昇を踏まえて課税最低限を調整するのは筋が通っている」と評価する。

◆高所得者ほど減税額は大きくなってしまうが…

 実現には課題もある。所得に応じて税率が上がる累進課税制度の下、高所得者ほど減税額は大きくなり、公平性が問題となる。また、税収は減る。林芳正官房長官は31日の記者会見で、控除額を178万円に引き上げた場合、国・地方で7兆~8兆円程度の減収が見込まれると指摘した。

会談に臨む(左から)国民民主党の古川国対委員長、榛葉幹事長、自民党の森山幹事長、坂本国対委員長=10月31日、国会で(佐藤哲紀撮影)

 財源に関し、玉木氏は「増えすぎた税収をお返しする」と説明するが、野村総研の木内登英氏は「財政赤字が恒常的に続く状況で、増えた税収を返すというのは理解しにくい。基礎控除の引き上げは、低所得者に的を絞るべきだ」と話す。

◆大きな税収減につながる政策、財源は?

 国民民主はガソリン税を一時的に引き下げる「トリガー条項」の発動や、賃金上昇率が物価上昇率より年率2%を上回るまでの消費税率5%への引き下げにも意欲を示す。いずれも大きな税収減につながる政策で、財源確保は懸案だ。  自民は31日、国民民主との円滑な協議のため、両党政調会長による会議体設置を提案したが、国民民主側は「案件ごと」の対応を主張した。政権運営の安定を狙う与党と、公約の実現を目指す国民民主との綱引きは今後激しくなりそうだ。 

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