◆「思いやり予算4倍」へ圧力?
首相は「言葉を飾ったり繕ったりするのではなく、本音で話ができる人という印象を持った」とトランプ氏を持ち上げてみせた。2016年に当時の安倍晋三首相が大統領就任前に訪米して面会し、良好な関係を築いた経緯を踏まえ、できるだけ早期に米国での会談を調整する方針だ。6日、トランプ氏当確の報道を受けて記者団の取材に応じる石破首相(佐藤哲紀撮影)
首相が言う通り、本音をむき出しにして、強気で厳しい要求を突き付けてくるのがトランプ流だ。1期目は安全保障では、在日米軍の駐留経費の負担増や自衛隊の米軍へのさらなる貢献などを迫った。防衛省幹部は「また、駐留経費の増大や兵器の大量購入を求められるのでは」と懸念を隠さない。 在日米軍の費用のうち、光熱水道費や日本人従業員の給与など一部は日本側が負担して「思いやり予算」と呼ばれる。近年は年2000億円台で推移するが、トランプ氏はかつて日本の負担を4倍に増やすよう圧力をかけたとされ、負担額などを定めた特別協定の期限が切れる2026年度末に向け、交渉の難航が確実だ。◆「日本は何もしない」…任務拡大も
日米安全保障条約に基づく日米地位協定の見直し論議も焦点だ。米軍の事件や事故が起きた際、在日米軍の特権的な地位を定める地位協定で日本側の捜査などが制約され、首相は「主権国家とは言えない」と改定に意欲を示してきた。 一方、トランプ氏は「日米安保条約は不公平だ」と強い不満を示す。「日本が攻撃されたら米国は戦わなければならないが、米国が攻撃されても日本は何もしない」と繰り返しており、自衛隊に新たな任務を求められる恐れもある。 この日の電話はわずか5分で切られ、在日米軍駐留経費の負担増などは話題に上らなかったという。首相は、トランプ氏から今後、負担増を突き付けられた場合の対応を記者団に問われて「いろいろな観点から日米同盟の強化を精力的に議論していきたい」と述べるにとどめた。在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算) 日米地位協定では在日米軍の駐留費用は原則、米国が払うことになっているが、1978年に円高を受けて労務費の一部を日本が肩代わりしたことを機に始まった。2022年度から5年間の日本側負担は米側の要求で前回より増額となった。
◇◆「トランプ円安」で防衛費増大の恐れ
米国からの武器購入の増加に加え、トランプ氏の経済政策で円安が進むと、日本の防衛費の増大をさらに招きかねない。演説するトランプ氏(2024年7月18日撮影)
会計検査院は6日、防衛省が米国製の武器を購入する「対外有償軍事援助(FMS)」で、円安の進行によって2023年度に1240億円近くの損失が生じているとの試算を発表した。◆円建てでは2023年度に1240億円もローン膨張
米国から兵器を購入する際は最大10年間の分割払いのローンを利用している。検査院によると、2023年度の支払対象額は57億8692万ドルで、契約時の為替相場で円に換算すると6688億円。だが、2023年度の支払時には、円安が進んだため7928億円となり、1240億円の追加支出が必要となったという。 政府の計画では2023〜27年度の防衛費は総額43兆円を見込む。前計画(2019〜23年度)の27兆円から増えており、米国へのローン支払いも膨れ上がる。検査院の試算はトランプ氏から武器購入を迫られるだけでなく、米国内の政策によって円安が進んだ場合、日本の負担がダブルで増加することを示唆している。(石井紀代美) 鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。