兵庫県の斎藤元彦前知事(47)の失職に伴う知事選(17日投開票)で、各候補者らは9日、週末でにぎわう街頭で支持を訴えた。自主投票を決めた自民党の支援先が3候補に分かれるなど、激しい選挙戦が続いている。
尼崎市長を3期12年務めた稲村和美氏(52)は9日、川西市の阪急川西能勢口駅前で演説。「今までのやり方の延長では課題を解決できない時代。リーダーの組織運営の力が問われる。抜本的な行財政改革に取り組み、メリハリを付けた施策をする」と声を上げた。同市の越田謙治郎市長もマイクを握り、「尼崎市が住みたい街ランキングに入るようになった。稲村氏が財政を立て直しながら、まちづくりに投資をしてきたからだ」と手腕をたたえた。
稲村氏は政党からの推薦を求めていないが、立憲民主党と国民民主党の両県連は「稲村氏が最もふさわしい」と支援を決めた。公明党県本部は自主投票としたものの、水面下で稲村氏を応援する。
一方、文書告発問題をきっかけに斎藤氏に不信任決議を突きつけた県議会(定数86)最大会派の自民県議団(37人)。9月から独自候補の擁立を模索してきたが、適任者が見つからず、10月27日の総会で自主投票を決定した。斎藤氏への支援禁止も確認したが、直後に明石市議団が撤回を要求。党県連は11月1日、支援禁止を取り下げた。県連会長の末松信介参院議員は「あえて(斎藤氏の)名前を言わなくても分かってもらえる」と釈明した。
こうした経緯の末、県議団の半数以上が稲村氏を支援するが、斎藤氏や元参院議員の清水貴之氏(50)の応援に回る地方議員もいる。
斎藤氏は9日、地元の神戸市須磨区で演説。「改革は道半ば。まだやめるわけにはいかない」と訴えると、数十人の聴衆が「頑張れ」「負けるな」と声援を送った。
陣営には親族や中学・高校の同級生、前回選から支援する市議や経営者も加わる。連日の街宣活動で多くの聴衆を集めるが、陣営関係者は「街頭やインターネットでの人気はあるが、実際にどこまで投票してもらえるか。(文書問題への)反発も根強い」と漏らす。
事務所には、自民関係者などから必勝祈願の「ため書き」や花が寄せられた。しかし政党と距離を置きたい斎藤氏の意向で飾らず、市民からの寄せ書きで壁を埋める。「しがらみのなさ」をアピールし、単身で街頭活動を続ける方針だ。
「誹謗(ひぼう)中傷による対立構造から融和へ。悪くなった兵庫のイメージを立て直したい」。清水氏は9日、明石市のJR明石駅前で約100人を前に演説。一番の争点に「知事の資質」を挙げ、元民放アナウンサーとしてコミュニケーション力をアピールした。
清水氏は衆院選に日本維新の会公認で立候補する予定だったが、維新県議団の要請で出馬を決意。離党して無所属で臨む中、幅広い支援を求めている。11月2日には自民の神戸市議団と政策協定を締結。市議団幹部は「支持者に対して選択肢を示すことが我々の責任だ」と説明する。大票田の神戸市で自民と維新の市議が肩を並べてビラを配り、支持を呼びかける。
共産党の推薦を受ける医師の大沢芳清氏(61)は「県政の正常化」を訴えるとともに、病院長としてリーダーシップを発揮した経験を強調。小池晃書記局長ら党幹部も応援に入り、支持拡大を図っている。
このほか、福本繁幸氏(58)、立花孝志氏(57)、木島洋嗣氏(49)もそれぞれ支持を訴えている。【山田麻未、大野航太郎、栗田亨】
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