自民党は政権与党としての覚悟があるのだろうか。28日投開票の3つの衆院補欠選挙は、2つの不戦敗を含め全敗が確実になった。岸田文雄首相(自民総裁)は選挙前、補選について国会で「私への判断も含まれる」と答弁していた。ならば今回の結果は「リーダー失格」と判断されたことになる。
しかし、補選はあくまで地域限定の選挙だ。信を問うべきは本来、衆院解散・総選挙である。
振り返れば令和3年10月の前回衆院選からさまざまなことが起きた。首相は防衛費増額や反撃能力(敵基地攻撃能力)保持を含む安全保障3文書を決定した。経済安全保障法制の整備を進め、東京電力福島第1原発の処理水海洋放出を実行した。物価高や円安の進行があるとはいえ、大幅な賃上げ、過去最高の株高・税収増と経済は上向きになった。
被爆地初開催となった先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)を主催し、ロシアの侵略を受けるウクライナの大統領を招いて連帯を表明した。先の国賓待遇の米国訪問では強固な日米関係を確認し、未来に向けた国際秩序の形成への揺るぎなき決意を示した。
こうした成果に反対の人たちもいる。自民の派閥パーティー収入不記載事件、閣僚らの相次ぐ不祥事と交代、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と自民議員の関係など負の部分もあった。それも含めて国民が判断する時機は到来している。
28日は前回衆院選から約2年半(910日)の節目だった。現行憲法下で行われた計25回の解散について前回衆院選からの期間を数えると平均995日、約2年9カ月だ。6月23日の通常国会会期末にあわせた解散ならば約2年8カ月で、順当な時期といえる。
確かに不記載事件は政治の信頼を揺るがす不祥事だ。表面化してから間もなく半年たつにもかかわらず、改善策をはかる政治資金規正法改正案はいまだ成立していない。それでも、である。「政治とカネ」の議論は、この国をどうするのかという本質的な話ではない。
内閣支持率の低迷を踏まえ、自民内には「今解散したら討ち死にだ」との情けない声がしきりに聞かれる。しかし、解散を先送りしても政策を前に進める際に常に「政治とカネ」がつきまとうだろう。政権与党への評価も含め、一度、国民の審判を受けた上で仕切り直すことに理はある。
首相が実現に意欲を示す憲法改正も大義となる。改憲を支持するのか、それともそれを阻害する勢力を支持するのか。多くの政党が賛同する安定的な皇位継承のための皇室典範改正を今国会で実現させた上で、いろいろあっても政権与党がいいのか、あるいは結果的に共産党と連携する立憲民主党などの野党に政権を任せるのかの判断を国民に委ねる時機だ。
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