11月17日に行われた兵庫県知事選。
斎藤さんへの不信任決議をきっかけに始まった選挙戦だったが、斎藤さんが逆風をはねのけ勝利する結果になった。
■SNSが大きく影響した兵庫県知事選
この記事の画像(8枚)今回の兵庫県知事選は、SNSの力も大きく影響した選挙戦だった。それを示すデータがある。
東京大学大学院 鳥海不二夫教授による「斎藤氏に関するSNSの拡散数」の調査では、7月から9月の初め頃にかけて、赤い線で示された「支持」はかなり低く、「不支持」の方が大きく上回っていた。
しかし10月末にNHK党・立花氏が斎藤氏を応援すると支持が跳ね上がった。立花氏は自身の当選を目的としないで、斎藤氏を応援する異例の選挙を展開してきた。
前明石市長 泉房穂さん:今回、立花さんが言っておられたのは『テレビは信用ならない』『斎藤知事に問題があったと言っているテレビを信用するな』と。私もテレビでそういう趣旨の発言をしていました。まさにテレビは信用に値しない、SNSを信じなさいと言って、すごい勢いでSNSが広がっていった。
前明石市長 泉房穂さん:かたやテレビの方は、選挙が始まると報道がピタッと止んでしまった。情報を欲しい方は、テレビが報道しないので、SNSに情報を取りに行った。SNSでは斎藤さん支持一色な状況でしたし、しかもテーマがそれまでのテレビ報道と相反する、『斎藤さんは“はめられた”被害者だ』と、『悲劇のヒーローだ』という形になって、多くの県民がSNSを見た上で判断した。 テレビを信用するよりも、SNSを信用したという、歴史の転換点となるような選挙だったと私は思っています。
■「有権者はテレビよりSNSを信用した。これはテレビにとって大きなテーマ」と泉房穂氏
関西テレビ 吉原功兼キャスター:選挙活動中、テレビメディアは公平性・中立性を担保しながら放送するため、テレビの中で伝えられるものの限界みたいなものを感じながら、伝えているところはあります。
関西テレビ 加藤さゆり解説デスク:放送法の中で、選挙期間中は平等性であるとか、公益性・公平性というのを担保しながら報じる中で、やはりどうしても政治的公平性に配慮するあまりに、有権者に必要な情報を確実に届けられていなかったかもしれない。 そして情報の空白みたいなことが起きたところを、有権者がSNSに情報を求めに行ったことは確かに事実で、そこを私たちも受け止めなければいけない選挙になったと思います。
関西テレビ 吉原功兼キャスター:SNSで発信されているさまざまな情報がある中で、それが正しいのか、そうではないのか、テレビメディアとしてその情報をどう受け取ったらいいのかもお示しするところが、テレビとしての使命なのかもしれません。
前明石市長 泉房穂さん:ぜひお伝えしたいのですけど、私もテレビで働いていましたし、テレビの可能性を今も信じています。ところが今回の選挙を通して、多くの有権者はテレビよりもSNSを信用したわけです。これはテレビにとってもかなり大きなテーマ。 しかも今回の争点は、斎藤さんに問題があったのか、斎藤さんは被害者だったのかというような感じで、全く正反対になっています。当然テレビとしてはこのテーマを逃げることなく、しっかりと検証して行く必要性は、私はあると思っています。
■「有権者の皆さまの求めていることを満たせなかった」と太田昌克氏
共同通信社編集委員 太田昌克さん:私もメディア人、言論人の一人として思いますのが、有権者の皆さまの求めていることを満たせなかった。そして私たちがより積極的、能動的に情報発信をどこまで行たのか。法律の規制の問題もある中で、そこは私たち今一度、謙虚にならなきゃいけないし、自分たちの報道のあり方を検証する必要があると思います。
共同通信社編集委員 太田昌克さん:一方で『メディアvsSNS』みたいな二項対立、分断の状況を作るのではなくて、大切なことはお互いが切磋琢磨し合いながら、民主主義の主人公である有権者の皆さんに、ファクトベースの情報を提供していくことなんです。
共同通信社編集委員 太田昌克さん:今回忘れてはならないのは、斎藤さんが予想外の主張が浸透した結果、おそらく当選されたと思う反面、それ以外の候補に票を投じている方が兵庫県民の半数以上いた。すなわち有権者で投票所に足を運んだ方の半数以上が、斎藤さんに『ノー』をつきつけている。このもう一つの現実もしっかり私たちは見つめる必要があるんじゃないかと思います。
■告発文問題「今のメンバーで続ける百条委員会に正当性は?」と吉村洋文氏
斎藤さんが出直し選挙で知事に返り咲いたとことになりますが、まだ数々の疑惑は残っていて、告発文の検証がこれからも行われていく。
疑惑を調査する百条委員会だが、当初年内をめどに報告書を取りまとめる予定だった。けれども知事選の影響で来年以降に延期も考えられるということだ。
今日、日本維新の会の吉村洋文共同代表は、「全会一致で不信任を出した今のメンバーで続ける百条委員会に正当性があるのか?」と問題提起した。ただ吉村共同代表は百条委員会を続けること自体を否定しているわけではない。
■「テレビ局そのものもしっかり検証する必要がある」と泉房穂氏
前明石市長 泉房穂さん:今回は失職しての知事選でしたから、4年間の任期の新たなスタートという面ももちろんありますけど、もう一つは9月の不信任の前に戻った状況もある。百条委員会の継続の問題とか、第三者調査委員会が継続している問題があります。
前明石市長 泉房穂さん:今回、私としては多くの世論が、どちらを信じていいか分からない状況になっています。やはり事実が今回のSNSにあったような、『斎藤さんは“はめられて”被害者なんだ』ということが事実なのか。そうではなく斎藤さんにも問題があったということが事実なのか。
前明石市長 泉房穂さん:そこはいずれにしてもしっかり検証する必要があり、私はテレビ局も他人事ではなく、テレビ局も私も含めてですけれど、かなり斎藤さんに問題ありのトーンで報道したという責任もあります。そうだったのか、そうでなかったのかはテレビ局そのものもしっかり検証する必要があると、私は思っている立場です。
7つの疑惑がまだ残っているという段階。百条委員会、第三者委員会で調査が進んでいくことになる。
共同通信社編集委員 太田昌克さん:吉村さんが言っていることは、もっともだと思うんです。真実がどちらか分からないんだと有権者の方が迷われたと思うんです。ネットの情報に頼った方もいた。
共同通信社編集委員 太田昌克さん:それはファクトがきちんと確立する前に不信任案を可決してしまった議会の責任も問われてくるし、議会のやり方が本当に良かったのかということも検証されなくてはいけない。
共同通信社編集委員 太田昌克さん:それから何より大切なのは、本当にどっちだったのかっていうことをですね、ファクトというのは白黒じゃないと思うんですよ。いろんな事情があって、多層的に事実が積み重なっている。丁寧に、客観的に、きちんと証拠を一つ一つ積み重ねながら、やっぱり時間がかかってもいいから、県民の皆さんが分かるようなファクトを、百条委員会や第三者委員会できちんと出すことが何より大事だと思います。
(関西テレビ「newsランナー」 2024年11月18日放送)
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