11月24日に投開票の名古屋市長選挙で、争点の一つとなっているのが「名古屋城天守閣の木造復元」です。閉鎖が続く天守閣の行方はどうなるのでしょうか。
■「“本物”の城に」河村前市長が打ち出すも…
名古屋市中区三の丸にある「階段体験館」では、名古屋城天守閣の「木造階段模型」が作られています。
この記事の画像(10枚)大きさから勾配まで、写真や資料の図面を基に忠実に再現されていて、木造天守閣を少しだけ体験できます。
河村たかし前市長(2009年6月):
わしは実は天守閣を木で直そうと。
2009年に初当選した河村たかし前市長が打ち出したのが「名古屋城の木造復元」です。
「空襲で焼けてしまう前の“本物”の城に」と訴えて進めてきましたが、2019年、石垣の保全をめぐり、文化庁から待ったがかかる事態になりました。
■事業は事実上ストップ…「小型の昇降機」めぐり
もうひとつの大きな問題が、木造復元する天守閣に設置する「小型の昇降機」についてです。河村前市長が3階以上には設置しないという独自の考えを示したことに、「反バリアフリー的発言」と障害者団体が抗議しました。
河村たかし前市長(2022年12月):
やっぱり400年前、その姿にすると。合理的配慮はせないかんので、1〜2階までだったら合理的配慮と十分言えるのではないかと。
さらに、2023年6月に開かれた市民討論会で、障害のある男性に対し、参加者から差別的な発言が浴びせられました。
市民討論会の参加者:
どこまで図々しいのって話で、我慢せえよって話なんですよ。そのお金はもったいないと思うけどね。だからエレベーターは必要ない。
この問題を受けて今、木造復元の事業は事実上ストップしてしまっています。エレベーターの設置を求め活動する団体は…。
名古屋城木造天守にエレベーター設置を実現する実行委員会の辻直哉事務局長:
なかなか(前)市長さんには受け入れてもらえず。差別発言が飛び出すとか、そこまできたことに対しては非常に残念。誰もが安心して歴史に触れることができる、そしてみんなと同じ空間・眺望を見ることができる、私はそういう名古屋城にしてほしい。
木造天守閣の建設は進まず、今ある天守閣も老朽化などを理由に閉鎖していて、すでに6年半が経ちます。先の見通しは立っていません。
■「木造復元」候補者の立場は
河村市政の「置き土産」をこの先どうするのかについて、河村前市長の後継者を名乗る広沢一郎さん(60)は、木造復元についても継続・推進の立場です。
広沢一郎さん:
名古屋城は木造で本物の復元をしてまいりたい。文化財としての価値を損なわない範囲で、どこまでバリアフリーができるかというのはチャレンジですね。
大塚耕平さん(65)は、市民への説明を最優先にし、合意を得てから今後の対応を探ると主張しています。
大塚耕平さん:
木造復元といっても、今市民のみなさんに正確な事実が伝わっていないので、それをきちっと市長として説明するというところから始めたい。
尾形慶子さん(67)は、財源などを理由に木造復元の中止と、今の天守閣の耐震化を訴えます。
尾形慶子さん:
天守閣の木造化は莫大な無駄遣いでありますし、大反対です。現在の天守閣を耐震改修すれば、たった29億円でできる。
■毎年1億円の経費も…費用面も問題に
費用面も大きな問題となっていて、木造復元の総事業費は500億円とされています。費用を巡り、河村前市長と市議会は対立が続いていました。
さらに、木造化に使う木材も既に伐採済みで、保管するために2022年度から毎年1億円の経費が掛かっています。復元事業は事実上ストップしているため、今のままでは保管の経費を払い続けることになってしまいます。
■ほかの候補者のスタンスは
・太田敏光(76)さんと水谷昇(61)さん
「木造化を中止して、今の天守閣の耐震化を」
・不破英紀(64)さん
「時間をかけ慎重に進めるべき」
・鈴木慶明(85)さん
「財源次第だが総合的に考えるべき」
(東海テレビ)
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。