自民、公明、国民民主の3党が、政府の経済対策をめぐる協議を開き、国民民主党が求める『年収103万円の壁』の引き上げについて話し合いました。
■「103万円の壁」若い世代ほど見直し賛成 親の負担 増大
自民党は、『年収103万円の壁』の引き上げに向けた考え方を経済対策に明記する方向で調整しています。
「103万円の壁」引き上げ 経済対策に明記へ この記事の写真は18枚 国民民主党の玉木代表は11月19日、『103万円の壁』の引き上げについて、「現時点においては、178万円(への引き上げ)を譲るつもりはない」
としています。 国民・玉木代表「103万円の壁」引き上げについて
共同通信の世論調査です。
103万円の年収の壁を見直すことについて、
●30代以下は、賛成79.7%、●40〜50代は、賛成75.5%、
●60代以上は、賛成59.3%と、
若年層ほど賛成の割合が高くなっています。
「103万円の年収の壁を見直すことについて」世論調査家族の扶養に入っている子どもが、年収103万円を超えると親の扶養から外れ、親は扶養控除を受けられず、親が支払う所得税と住民税が増えます。
子どもの年収103万円超で親の扶養外に子どもが年収103万円を超えた場合の親の負担です。
都内に住む家族、父親は会社員で年収500万円、妻と子どもを扶養、
母親はパート勤務で年収100万円、子どもは大学生(20歳)でアルバイトをしているというケースです。
大学生の子どものアルバイト代が年収102万円の場合、
父親が支払う所得税と住民税の合計は、約21万1000円です。
アルバイト代が年収104万円の場合、扶養控除が無くなるため、
父親が支払う所得税と住民税の合計は、約29万7900円となり、約8万7000円、
父親の負担が増えます。
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■地方は税収減で懸念続々「市民生活に支障が出る」■地方は税収減で懸念続々「市民生活に支障が出る」
年収の壁を103万円から178万円に引き上げた場合の税収は、7兆円〜8兆円の税収減となり、このうち、地方税が約4兆円の税収減となります。
年収の壁103万円→178万円に引き上げた場合 全国知事会会長の村井宮城県知事は、年収の壁を178万円に引き上げた場合、「県と市町村合わせて、620億円プラス190億円(計810億円)の減収。立ちどころに財政破綻する。少なくとも私が総理なら首を縦には振らない」としています。 全国知事会会長・宮城県の村井知事 年収の壁引き上げ案について 神戸市の久元市長です。
「神戸市は、354億円(市税収入の11%)の減収になる。市民生活に支障が出ることは確実。国の責任でしっかりと補填していかなければならない」 神戸市長の見解
神戸市の行政サービスへの影響です。
影響が懸念される市の独自事業です。●子ども医療費・難病などの医療費助成
●学校給食費の負担軽減
●保育料の軽減
●保育士などの処遇改善
●高齢者や障がい者などの交通機関の利用費助成
●駅の再開発や学校の環境整備
などです。
事業費は合計1195億円で、このうち地方税などの一般財源が357億円で、354億円の減収となると、これらの事業に影響が出るとしています。
神戸市の場合 国民民主党の玉木代表は、税収が減ることへの懸念に対し、「一昨年・昨年度の予算決算ベースでみると、使い残しは年平均で9兆円ほど。税収については、平均で予定より4兆円上振れている」として、7兆円程度の減収には対応可能だとしています。 国民民主・玉木代表 税収減の懸念について しかし、テレビ朝日・財務省の担当記者によると、
「9兆円について、主な財源は国債のため、使わなかった分、国債を発行せずに済んでいるだけ。お金が余っているわけではない」
実際、剰余金は去年かなり減っているということで、
「税収については、今年度は定額減税などもあり、これまでのところ下振れている」といいます。 テレビ朝日 財務省担当記者次のページは
■103万円より影響大 『130万円の壁』手取りいくら減る?■103万円より影響大 『130万円の壁』手取りいくら減る?
103万円よりも影響が大きいとされる『130万円の壁』です。
年収が103万円を超えると、所得税の支払いが発生する『103万円の壁』ですが、扶養されている主婦の場合は、年収150万円までは所得税が増えない『配偶者特別控除』があります。
年収が106万円を超えると、厚生年金と健康保険の支払いが発生する『106万円の壁』は、手取りは減りますが、将来もらえる年金は増えます。
ただ、年収が130万円を超えると、国民年金と国民健康保険の支払いが発生します。
手取りは減り、将来もらえる年金は変わりません。
【『130万円の壁』手取りいくら減る?】
『130万円の壁』で手取りはいくら減るのか、試算しました。
<年収129万円の場合>国民年金と国民健康保険の支払いはないので、手取りは約123万6000円。 <年収130万円の場合>
国民年金と国民健康保険で、年間約32万円の支払いが発生。そのため、手取りは約96万8000円となります。
年収130万円以上で、『壁』の前と同じ水準の手取りにするには、年収165万円が必要です。
国民年金と国民健康保険で、年間約36万円を支払いますが、手取りは、年収129万円とほぼ同額の約123万7000円です。
「130万円の壁」手取りいくら減る?【年収130万円未満『第3号被保険者』】
年収が130万円未満の『第3号被保険者』についてです。
第3号被保険者とは、『原則、年収130万円未満なら、会社員などの配偶者に扶養されるため、自身で保険料を支払う必要がなく、年金を受け取れます』という制度で、1986年に始まりました。
女性の第3号被保険者の推移です。
制度が始まった1986年は、約1090万人。
ピークとなったのは、1995年で、約1216万人。
現在、2024年5月末で、約663万人です。
女性の第3号被保険者が占める割合です。
35歳以上の女性の約3割が第3号被保険者です。
若い年代ほど少ないです。
「調整している」が61.5%、
「調整していない」が38.5%でした。
最低賃金の時給上昇で、さらなる就業調整が起きる可能性もでています。
時給上昇を理由にさらなる就業調整をする意向があるパート女性は、約210万人と推計されています。
就業時間や日程の調整について次のページは
■手取り減を給付で補填『130万円の壁』対策法案も■手取り減を給付で補填『130万円の壁』対策法案も
立憲民主党は11月13日、『130万円の壁』の対策法案を国会に提出しました。
社会保険料の負担による手取りの減少を、給付で補填する法案です。
立憲民主党の階猛衆院議員は、「各種の壁がある中で130万円というのは一番重い、重大な壁であるというのが我々の認識」としています。 立憲民主党「130万円の壁」対策法案 国会に提出
立憲が出した案です。
グラフの縦軸が手取り、横軸が年収です。
年収が増えていくにしたがって、手取りも増えていきます。
しかし、130万円になったところで、手取りが減ります。
その減った手取り分を給付金で補填し、給付額の幅を徐々に減らしていくというものです。
年収200万円までを対象とします。
対象人数と財源です。
356万人程度を想定していて、財源は約7800億円です。
対象人数と財源(「羽鳥慎一モーニングショー」2024年11月20日放送分より)
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