「春の叙勲」の受章者が発表され、日銀の黒田前総裁ら、4108人が選ばれたほか、悪役プロレスラーの受章も決まった。

2023年4月まで、日本銀行の総裁を務め、異次元の金融緩和に取り組んだ黒田東彦さんは、瑞宝大綬章に選ばれ、「わたしの勤務した財務省、アジア開発銀行、日本銀行の功績に対する叙勲と考え、感謝いたします」とのコメントを寄せた。

また旭日大綬章には、鳩山由紀夫政権で官房長官を務めた、平野博文さんらが選ばれた。

旭日大綬章・平野博文さん「これを機にまた新たな気持ちで、国家国民のために与えられた時間を尽くしていかなきゃいけないと」

一方、外国人叙勲では、悪役プロレスラーとして人気だったタイガー・ジェット・シンさんに旭日双光章が贈られる。

叙勲にはそうそうたるメンバーが並んでいるが、少し意外な名前も出てきた。

悪役プロレスラーとして日本で一世を風靡(ふうび)し、凶器のサーベルをなぜか口にくわえて現れるシーンが印象的なタイガー・ジェット・シンさんが旭日双光章を受章した。

イギリスの伝説的バンド「ピンク・フロイド」の「吹けよ風、呼べよ嵐」という曲は、入場テーマ曲としてよく使われていたが、これにのって登場すると子どもたちから恐怖の絶叫が上がったというくらいの悪役プロレスラーだった。

全盛期は1970年代から1980年代初頭で、特にアントニオ猪木さんとの流血試合の数々は多くの伝説を残した。

このサーベルが凶器で、多くの凶器を使った攻撃や反則攻撃が得意で、多くの人々に忘れられない印象を残した。

インターネットでも、午前中にタイガー・ジェット・シンがアクセスランキングで1位になったと注目が集まっている。

どうして今、叙勲を受章したのだろうか。

そもそも、叙勲というのは1年に2回、春と秋にある。

対象は、国や公共への功績があった70歳以上の人と警察や自衛隊といった危険性の高い業務に従事した55歳以上の人などで、今回あわせて4108人が受章している。

一方で、別枠となる外国人叙勲というものもあり、例えばアメリカのシャーマン元国務副長官やオーストラリアのビショップ元外相など49カ国、101人が受章した。

この枠で、タイガー・ジェット・シンさんも旭日双光章を今回、受章されたという。

面々の中では、かなり異彩を放っていると思うが、なぜ受賞したのか。

内閣府は、「スポーツを通じた日本とカナダの友好親善、そして相互理解の促進に寄与した」とその理由を説明している。

テレビでは、「インドの狂虎」とも呼ばれていたが、実はタイガー・ジェット・シンさんはインドからの移民で、国籍はカナダ。

悪役として活躍したあと引退したが、その後、不動産開発などで手腕を発揮して成功を収め、タイガー・ジェット・シン財団という慈善団体を立ち上げて、恵まれない子どもたちや女性たちを保護する活動、子どもたちにクリスマスプレゼントを配る活動などもした。

これまでに、17億円近くの寄付金を集めて社会に貢献してきた。さらに、東日本大震災で被害を受けた福島県の子どもたちの支援を行うなど、日本でも活動を続けている。

こうしたことが評価されて、2022年10月には、カナダの日本総領事館でも表彰されていたということがあった。

さらに、受章決定後に共同通信が行ったインタビューでは、「日本は第2の故郷、家族のような存在」と話していた。そして、「猪木が一番強かった。試合後は打撃の痛みが数週間残った」と話していて、今回の受章は日本の全てのプロレスファンへ与えられた栄誉だと話していた。

外国人叙勲というものは、日本を去る外交官の人などに儀礼的に、形式的に与えるケースも多いが、今回、タイガー・ジェット・シンさんの場合は、日本への貢献や愛情というものが非常に高く評価されたという意味では、“真の受章”ともいえる。

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