24日投開票された名古屋市長選は、河村たかし前市長が後継指名した元副市長、広沢一郎氏(60)が、自民、立憲民主、国民民主、公明の4党が相乗り支援した元参院議員、大塚耕平氏(65)ら新人6人を破り、初当選を確実にした。
河村氏と対立する市議や愛知県知事らによる“反河村包囲網”が敷かれる中、広沢氏は「オール与党VS庶民」などと対立構図を強調。SNS(ネット交流サービス)も駆使して支持を広げた。一方、SNSでは敗れた大塚氏の主張と異なる情報が拡散し、本人が打ち消しに追われるなどSNSの影響力を見せつける形となった。
市長選は1969年に並ぶ過去最多の新人7人が立候補した。広沢氏は河村氏と二人三脚による草の根選挙を展開。河村氏が取り組んだ市民税減税、市長報酬2800万円から800万円への削減、地方議員報酬の市民並み給与への引き下げなどを公約に掲げ「庶民VS2000万円議員団」などと既得権益の打破をアピール。X(ツイッター)の投稿で政策や演説動画が拡散された。
一方、国民民主を離党し出馬した大塚氏は「対立から対話へ」をキャッチフレーズに前河村市政の刷新をアピール。学校給食の無償化や認知症対策などを訴えたが、減税や市長報酬削減などの対応について明確に言及しなかったこともあってかSNS上で「増税派」とする投稿が広まった。
大塚氏に対しては「移民推進派」とする投稿も拡散されており、本人が「デマで選挙をゆがめるということは大変残念。選挙と民主主義を守っていただきたい」と動画で呼びかける異例の展開となった。陣営関係者は「選挙にも影響が出た。本来割く必要のない時間を割いた」と話す。
17日投開票の兵庫県知事選では、落選した稲村和美・前同県尼崎市長に対し「外国人参政権を進めている」といったデマがX上で飛び交い、後援会が公職選挙法違反の疑いで告発状を提出している。
名古屋大教授の山本竜大氏(政治コミュニケーション論)は「SNSは情報発信コストを下げる一方で、瞬時に情報が拡散するゆえ、フェイクニュース、根拠が不十分で裏付けが取れない言葉も氾濫しやすくなった」と指摘。「こうしたリスクに対しては、対立に至らず深い議論過程をたどっているかを監視する役割がメディアだけでなく、有権者にも大きくのしかかっている。有権者、候補者、その支援者も、正確な事実か、感情に基づく発言か、情報の見極めが求められている」と話す。【真貝恒平、大原翔】
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