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 先日、APEC(アジア太平洋経済協力)の会合に日本から石破茂総理が初出席したが、この時の振る舞いが話題となり、Xではトレンド入りまで果たした。会合に先立ち、各国の代表が挨拶を交わす中、石破総理は座ったまま握手。歓迎レセプションでは、各国首脳の前で華やかな舞踊が披露される中、腕組みをしながら鑑賞する様子も伝えられた。さらに閉幕の集合写真には、事故渋滞に巻き込まれた影響もあり欠席で、石破総理不在のまま撮影が行われることになった。

【映像】口いっぱいにおにぎりを詰め込む石破総理

 この他にも、会合の場で1人でスマホを触っていたり、通常はお互い右手で握手をするところ、両手を添えてみたり。外交に不慣れな部分も見せ、国内では第1次石破内閣誕生の際、記念撮影で服装が乱れていたことから「だらし内閣」「みっとも内閣」と揶揄もされた。「国の代表ならマナーや教養、品性は絶対に必要」「周囲は外交上のマナーとかレクチャーをしないの?」という声も聞かれる中、日本の代表者にもとめられるものは、どこまでか。『ABEMA Prime』では政治ジャーナリストを招き議論した。

■総理の振る舞い次第で外交に影響?

 APECでの振る舞いが話題となった石破総理だが、このことをきっかけに9月、茨城・水戸市を訪問した際に、おにぎりを口いっぱい、さらに一口で食べた動画も同時に拡散し、品位やマナーについて疑問視する声がネットを中心に飛び交った。政治ジャーナリスト、元・日テレ官邸キャップの青山和弘氏は「食べ方とかは誰も言わない。それはその人の生き方だし、子どもではない。それはもう石破さんの生き様が表れている」と、食べ方については個性だとした。

 一方で外交時の振る舞いについては「外交での所作は国益に関わることがある。特にああいう国際会議では、初めての総理大臣だから挨拶に回るべきだと思うし、立って握手した方が丁寧だと思う。習近平主席との握手の仕方も、向こうが片手を出していて、こっちが両手で出している。そうすると下手に出ているように見える。そういう写真が切り取られて拡散されて、メッセージになることもある」と、本人にとっては何の気もない振る舞いが、外交に影響する可能性があると指摘した。

 初めて総理大臣になった石破総理に、外交マナーについてのレクチャーや作戦会議などはないのか。「これは自民党の中でも、教えてあげるべきだったという意見が結構ある。ただ、これまで総理大臣になった人、例えば安倍元総理は父も外務大臣で、本人も総理大臣を8年もやっていたから、誰も教えなくてもできた。岸田前総理も外務大臣が長かったからできた。石破さんは総理になるように準備をしてきた人ではないので、そこは抜けていた。官僚も遠慮するし、ベテランの60半ば過ぎの政治家に箸の上げ下げから、挨拶に行ってくれ、握手はこうしてくれとあまり細かく言えなかった。(外交の)経験不足は間違いなく今回露呈した」と述べた。

 コラムニストの河崎環氏は「私たちは今まで2世とか3世など、ある程度帝王学みたいなもので、家庭でしっかりと仕込まれてきた政治家たちが首相になる姿を、近年連続して見てきた。ここから改善されていって、首相らしくなっていかれるのかなというふうには思いたい」と語った。

 総理ともなれば、専属のスタイリストなどがついていても不思議ではなさそうだが、実情はどうか。青山氏は「安倍さんは、2期目は自前のスタイリスト、メイクが一緒についてきていた。おしゃれだというのもあるが、やはり見た目をすごく気にしていた。特に安倍さんは体調を崩されると(目の下に)クマが出てしまうので、隠してもらっていた。総理大臣にクマが出ていて元気がなさそうに見えると、外交上問題になったりとか、国民に不安を与えたりする。(費用は)たぶん党が出していたと思う」。

 同じく総理大臣経験者の麻生太郎氏は、議員の中でもダンディで有名。「スーツ、特にズボンがシワにならないように、足の裾のところに鉛を入れている。ベルトをしないのが彼のポリシーで、ウエストがピッタリのスーツを着るのがかっこいいからで、体型も保っている。かなり自意識過剰ぐらいだが、それが外交上の武器になるという発想だった。それによって敬意を払われることもあるし、なんと言っても吉田茂さんの孫で意識は高い」と紹介した。

■握手の仕方一つで2国間の力関係が出てしまう?

 見た目と同様かそれ以上に、振る舞いが大きな意味合いを持ってしまうのも総理という立場ならではだ。青山氏は「総理になったら途端に見られるポジションになる。しかも国の代表。中国の習近平主席との握手が、向こうが片手でこっちが両手だったというのは、いかにも下手に出ていると捉えられてしまう。(元総理の)小泉純一郎さんが北朝鮮の金正日国家主席と会う時も、絶対に一瞬でも頭を下げちゃ駄目だ、握手する時に絶対に頭を下げずに握手するなと。頭を下げた瞬間に、その瞬間を写真に撮られて、日本が頭を下げに平壌に来たというイメージ映像が作られてしまうから」と振り返った。さらには終戦直後、マッカーサーと昭和天皇による写真についても「マッカーサーがリラックスしていて、直立不動の天皇陛下というのが、『戦争に負けたんだ』という完全なメッセージになる。写真は一瞬でそういうイメージが作られてしまうということを、石破さんも注意した方がいい」と注意を促した。

 基本的に首脳会談の握手は、右手だけでするというのが大体のルール。「石破さんはたぶん選挙のノリで、両手でいってしまったんだろう。彼から言わせると本質じゃないということなのだろうが、ただそれが本質に見えてしまうことがあるということ」とも説明した。

 APECでは、初参加となれば自ら挨拶回りに出向いてもよかったところ、不慣れさもあってか座ったままだった石破総理。「問題になることもないが、そういうことが続くと石破さんはちょっと怠惰な人みたいな印象がついてしまう可能性はある。あと何よりも記念撮影に写らなかったのは大きなことで、存在感を示せなかった。昔、中曽根総理がサミットで、あえて前に行って(アメリカの)レーガンさんの隣で写真を撮ってもらったことがある。日本の総理大臣が堂々としているというのは、日本人に向けたサービスなんだということをおっしゃっていた。そういう気持ちを持つことも大事」。
(『ABEMA Prime』より)

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