上川陽子外相が大型連休中もアフリカ、アジア訪問を精力的にこなし、派閥裏金事件で逆風を受ける岸田政権を外交面で下支えしている。次期衆院選をにらみ、自民党内には「ポスト岸田」候補として期待する向きがあるものの、具体的な動きが広がるかは不透明だ。

上川氏は5日、訪問先のネパールでのオンライン記者会見で、今回の歴訪を振り返り「グローバルサウス(新興・途上国)への関与を深めていくことは極めて重要だ。力強いメッセージを発信することができた」と語った。

上川氏は4月26日~5月6日の日程でマダガスカル、コートジボワール、ナイジェリア、フランス、スリランカ、ネパールを訪問。中国が影響力を強めるグローバルサウスの引き寄せや、来年8月に横浜市で開く第9回アフリカ開発会議(TICAD9)に向け、各国外相と会談した。

日本の外相によるマダガスカル訪問は初めて。コートジボワールとナイジェリア訪問は1979年の園田直外相以来45年ぶり。それぞれ海上交通の要衝、西アフリカの物流拠点、アフリカ最大の人口2億人を抱える大国と、戦略的に重要な地域だ。上川氏は人材育成支援などに取り組み、経済関係を強化する方針を伝えた。

スリランカは、中国からの巨額融資の返済に窮しており、上川氏は経済危機の克服を後押しする考えを伝達。中国に国境を接するネパールでも2国間関係強化の方針を示した。

昨年9月の外相就任後の訪問国は延べ30カ国に上り、首相と二人三脚で経済外交を推進。自民の麻生太郎副総裁が今年1月の講演で「このおばさん、やるねえ」と評し「カミムラ」と言い間違えたことで逆に知名度も向上した。

「次の首相にふさわしい人」を尋ねる報道各社の世論調査でも、石破茂元幹事長や小泉進次郎元環境相に次ぐ3位に入る結果が出ている。

党内には、低支持率にあえぐ岸田文雄首相では「衆院選は戦えない」との危機感が拡大。党関係者は「初の女性宰相として刷新感のある上川氏を『顔』にすれば衆院選を乗り切れる」と指摘した。

ただ、上川氏が所属した岸田派は解散を決め、上川氏を首相候補に担ごうとする具体的な動きも今のところ見られない。局面打開に向け、目先を変えたいとの思惑だけが先行しているのが実情だ。女性首相候補としては高市早苗経済安全保障担当相、野田聖子元総務相らがライバルとなる。

上川氏の地元の静岡県では現職の辞職に伴う知事選が9日告示、26日投開票の日程で行われる。事実上の与野党対決の構図で、結果は上川氏の党内評価にも影響を与える可能性がある。

閣議に臨む上川陽子外相=4月26日、首相官邸

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