岸田文雄首相(自民党総裁)が自民派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けた政治資金規正法改正論議をリードしようと奔走中だ。外国歴訪から帰国した6日には自民の実務者を首相公邸に呼び、与党案とりまとめの加速を指示。7日には国会に自ら赴き、浜田靖一国対委員長らに改正案の審議日程などを確認した。政権内には首相の「リーダーシップ」だと評価する声もあるものの、にわかに陣頭指揮を執り始めた首相への戸惑いも広がっている。
首相は7日午前、国会内で浜田氏や石井準一参院国対委員長と約30分面会し「(規正法改正の)自公案を今週中にとりまとめ議法(議員提出法案)としてしっかりと出せるようにしてもらいたい」と指示した。
首相はこの日、本会議や委員会などへの出席予定はなく、浜田、石井両氏に会うために自ら国会に足を運んだ。こうした対応は異例で、浜田氏は「びっくりした」と同僚に語った。首相はその後、自民党本部に移動し、森山裕総務会長、茂木敏充幹事長らと会談を重ねた。
首相は6日も、フランス、南米歴訪から帰国した直後に自民政治刷新本部の作業チームメンバーを公邸に呼び、規正法改正について協議。党が政治家個人に支出し、使途公開の義務がない「政策活動費」について、公開を検討するよう指示した。
政策活動費は規正法改正にあたっての主な論点の一つで、自民が先月23日に発表した具体案には検討項目とするにとどめていた。首相自身も国会答弁で公開に慎重な姿勢を示していたこともあり、党内からは「首相が政治不信の払拭(ふっしょく)に向けて動き始めた」(党幹部)との声も上がる。
とはいえ規正法改正論議では、政策活動費を全面公開するのか、部分的な公開にとどめるかなど、多くの論点が残されている。自民中堅は「政治改革に前のめりな姿勢を打ち出すにしても、政策活動費は党内でかなりもめる話だ。全く筋書きがない」と困惑気味に語った。【川口峻、高橋祐貴】
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