水俣病問題を担当する職員を増員すると表明した伊藤信太郎環境相=東京都千代田区で2024年5月10日午前8時42分、山口智撮影

 伊藤信太郎環境相と水俣病患者・被害者らとの懇談の際に、環境省職員が被害者らの発言中にマイクの音を切った問題を受け、伊藤氏は10日の閣議後の記者会見で、水俣病問題の担当職員を増員すると明らかにした。

 環境省によると、水俣病を巡る問題を担当する「特殊疾病対策室」の職員は現在12人。患者・被害者らとの懇談の機会を増やして地元の意見を丁寧に聞くため、今後兼務も含めて人員を拡充する。増員の規模は未定だという。

 さらに信頼回復のため、来年の慰霊式までに副大臣や政務官、幹部らも現地を訪れて被害者らと懇談する機会を設ける。

 伊藤氏自身は既に、患者・被害者らと再び懇談することを表明している。開催時期は未定としているが、「十分に時間のとれる日程で、できるだけ早い時期に開催したい」と話した。

 水俣病を巡っては、国と原因企業に損害賠償を求めた訴訟が現在も続いている。伊藤氏は「この問題が終わっていない責任は環境省に多くあると思う。現行法制の中で最大限何ができるかということを(検討するよう職員に)指示した」としたうえで、政治の役割についても「もう少しできることがあるのではないか」と述べた。

 また環境省は9日、懇談の場の進行表を公表した。司会者が発言を切り上げるよう促すことや、「3分でマイクオフ」という文言を明記していた。

 進行表では、各団体の持ち時間(3分)が近づいた場合、司会を務める環境省職員が「手短にお願いいたします」と発言者に伝え、「3分でマイクオフ」とすると記載。事前に「マイクをオフにさせていただくこともあるかもしれません」と職員が説明するという表記もあったが、環境省によると、司会者がその部分を読み飛ばし、現場で周知されなかった。持ち時間を超えた場合にマイク音を切るという方針に省内で異論は出なかったという。

 進行表には各団体が伊藤氏にコメントを求めたり、追加の発言の機会を要請したりした場合の想定問答もあった。「時間を短くしたから後でしゃべらせろと言われた場合」の回答例として、「各団体の御発言の後に、大臣から発言することとしておりますので、その後にと言うのは、進行上、時間を見つつ対応させてください」と記載していた。【山口智】

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