リニア中央新幹線の着工に反対してきた静岡県知事の川勝平太氏が9日に辞職し、26日投開票の知事選の結果次第で、工事が進む可能性が出てきた。ただ、与党内にも「リニアは本当に必要なのか」と疑問を投げかける政治家がいる。自民党の石破茂・元幹事長だ。政界随一の鉄道好きは、「国家プロジェクト」と言われるリニア計画の何が腑(ふ)に落ちていないのだろうか。
リニア中央新幹線は、最高時速505キロのリニアモーターカーを使い、東京―大阪間を67分で結ぶ計画だ。川勝氏が環境問題などから、県北部を通る南アルプストンネル(全長25キロ)の静岡工区の着工に反対。計画は大幅に遅れ、事業主体のJR東海は、品川―名古屋間の2027年開業を断念した。
川勝氏が失言問題後に辞任して状況は変わりつつあるが、石破氏はリニアは静岡工区だけの問題ではないと指摘する。「本当に東京から大阪まで通すリニアが必要なのか、という議論が十分成熟したと思っていない」というのだ。
JR東海はリニア計画の意義について、東海道新幹線の老朽化や災害リスクに備えることと、移動時間の短縮を挙げている。しかし石破氏は、今年開業60年を迎える東海道新幹線が補修しながら営業を続けてきたことから、「老朽化したからリニアが必要というのは論理の飛躍がないか」と懐疑的だ。新幹線が遅いと感じる人は飛行機に乗るとして、「もっと速い列車へのニーズはどこにあるのか」と疑問を投げかける。
リニアはJR東海が自己資金で整備する計画だ。ただ、第2次安倍政権は16年、工事を早めるために国の財政投融資3兆円を充てることを決めた。石破氏は、返済を約30年も据え置く融資は民間ではありえないと指摘し、「納税者が納得する説明をしていただきたい」と注文をつけた。
国はリニアで東京―名古屋―大阪を一体化させ、巨大な「スーパー・メガリージョン」として発展させる構想を掲げている。石破氏は「東京一極集中から、メガリージョン集中へ加速するだけだ」と批判。むしろ、地方鉄道の高速化などを進めるべきだと主張した。【原田啓之、佐久間一輝】
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