国会議事堂=東京都千代田区で、竹内幹撮影

 外国人技能実習に代わる新制度「育成就労」の創設を柱とする関連法改正案を巡り、永住者が税金や社会保険料を故意に納めない場合に永住許可を取り消せるとする規定が国会で議論になっている。一部の野党側からは「賛同できない」とする批判が相次いでおり、改正案の焦点の一つになりそうだ。

 育成就労は人手不足の分野で未熟練の外国人労働者を受け入れる。永住希望者が増えることを見据え、政府は、永住許可の取り消し要件に、税や保険料を故意に支払わない場合を加えた。一方で、政府は、本人に落ち度がなく、やむを得ない事情での未納は対象外としており、悪質なケースに限るとしている。仮に永住許可が取り消されても、多くは法相が職権で別の在留資格を付与する見込みとして理解を求めている。

 ただ、野党側から「永住者の未納の統計がなく、法改正の根拠がない」との批判が上がり、出入国在留管理庁は8日、サンプル調査の結果を公表した。永住者に生まれた実子の永住許可申請を基に、2023年1~6月に審査を終えた1825件を調べたところ、扶養者である永住者の未納は235件あったとした。

 サンプル調査のうち、国民年金の未納率は1割強。厚生労働省によると、20年度の国内全体の国民年金の最終未納率は2割弱だった。

 8日の衆院法務委員会で、立憲民主党の鎌田さゆり議員は「未納が分かったら、日本人と同じように、督促状を送付して、財産調査して、差し押さえするようにすればいい。なぜ永住権を剥奪するようなことをするのか」と批判した。

 10日の衆院法務・厚生労働委員会の審議でも永住許可の取り消しが議論され、立憲の西村智奈美議員はサンプル調査を追及。未納の235件のうち、永住許可の取り消しに該当するような、故意に支払わなかった件数をただしたが、政府は回答できず、西村議員は「まか不思議な取り消し理由の追加。賛同できない」と述べた。

 日本維新の会の足立康史議員は、未納率についてサンプル調査だけでなく、正確な実態把握を求めた。【三上健太郎】

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