選挙中に立候補者が、他の候補の街頭演説を妨害する行為は法律上、どのように規制されているのでしょうか。表現の自由や選挙活動の自由との関係は。現状と課題を探りました。
Q 4月の衆院東京15区補欠選挙で「選挙妨害」が話題になっていたね。
A はい。政治団体「つばさの党」の陣営が他の候補に近づき、拡声器で「売国奴(ばいこくど)」などと叫んだり、車のクラクションを鳴らしたりし、警視庁から選挙の自由を妨害した公職選挙法違反の疑いで警告を受けました。陣営はこうした過激な行為を自ら撮影し、ユーチューブで動画を公開して注目を集めました。
Q 演説を聴いている人には迷惑な話だね。
A 陣営は「(憲法で定められた)表現の自由、選挙の自由、政治活動の自由の中で正々堂々とやっている」などと主張し、動画の収益目的だとの指摘についても否定しています。ただ、被害を受けた立憲民主党や日本維新の会などの陣営は、街頭演説の事前告知を取りやめるなど選挙運動に支障が出ました。
Q 政党はどう対応しているの。
A 維新は規制を強化する公選法改正案をまとめました。「選挙の自由妨害」の適用例として「聴衆が演説を聴取することを困難にする行為」などを明記し、罰則を現行の「4年以下の懲役または禁錮」から「5年以下」へ引き上げる内容です。一方で公明党や立憲などは陣営の行為を問題視しつつ、まずは現行法で対応できないか見極める必要があるという考え方です。
Q 規制の方法が難しそうだね。
A 2019年参院選で当時の安倍晋三首相にヤジを飛ばした男女を排除した北海道警の対応が問われた裁判では、1審判決が排除の違法性を認めました。2審は女性の勝訴を維持したものの、男性は周囲の聴衆とトラブルを起こしていたなどとして逆転敗訴としました。今回、憲法学者からは「他候補の表現を妨害する自由までは認められない」との意見も出ており、憲法が保障する自由とのバランスに配慮が求められそうです。【田中裕之】
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