政府・与党連絡会議で発言する岸田首相(13日、首相官邸)

岸田文雄首相は13日、脱炭素の産業・社会構造への転換に関し、2040年を見据えた国家戦略を策定するよう指示した。年内にまとめる。政府は半導体工場やデータセンターの誘致などで電力需要が増加に転じると予測する。長期的な視点から太陽光・原子力といった脱炭素電源の確保や産業政策を一体で計画する。

首相は首相官邸で開いたグリーントランスフォーメーション(GX)実行会議で「経済社会全体の大変革と脱炭素への取り組みを一体的に検討し、40年を見据えたGX国家戦略として官民が共有する脱炭素への現実的なルートを示すものにしたい」と述べた。

40年を目標とした産業政策の戦略づくりは初めてとなる。

政府は24年度中に将来的な電源構成を示す「エネルギー基本計画」を改定する。これに合わせて脱炭素電源や送配電網の整備のほか、鉄鋼業などで二酸化炭素(CO2)排出を抑えた工程へ転換促進するといった政策の方向性を決める。

生成AI(人工知能)の拡大に伴い、日本でも電力を大量消費するデータセンター建設や半導体工場の誘致が進む。50年には電力消費量が現在の35~50%ほど増えるとの推計がある。国主導で脱炭素電源を拡充する必要性が指摘されていた。

風力・太陽光などの再生可能エネルギーの適地や、原発の立地は北海道や九州、関西といった地域に偏る。国家戦略として、こうした電源と産業拠点を集積させる「GX産業立地」も検討する。

岸田政権は脱炭素の取り組みを経済成長のエンジンと位置づけ、23年に「GX推進戦略」を決めた。32年度までの10年間で国費20兆円を投じ、技術開発や設備更新などに官民150兆円超の投資を見込む。

今回はさらに40年までを見据えた戦略を示し、企業が長期で投資を決めやすい事業の予見性を高める。論点として①エネルギー供給②産業立地③産業構造④市場創造――の4つを挙げた。

各分野で専門家から意見を聞く会合を複数回開き、年末をめどに「GX2040ビジョン案」をまとめる。

26年度に本格運用する温暖化ガスの排出量取引制度についても詳細な設計を急ぐ。いまは自主的な参加にとどまる仕組みを電力や鉄鋼、化学工業など排出が多い企業は義務化する見通しだ。

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