原子力空母「セオドア・ルーズベルト」の飛行甲板で発艦を待つFA18戦闘攻撃機=11日午後、沖縄本島北方の東シナ海洋上(大竹直樹撮影)

海上自衛隊と米国、韓国の両海軍は11~12日、抑止力を強化し、安全保障協力を推進する目的で東シナ海で共同訓練を行った。東シナ海や南シナ海の軍事拠点化を進め、周辺国に威圧的行動をとる中国や、弾道ミサイルを発射し、挑発行動を繰り返す北朝鮮を牽制する狙いがある。

護衛艦「ありあけ」など参加

海自によると、潜水艦の位置を探知し、攻撃する手順を確認する対潜戦訓練や海上阻止訓練を実施。米海軍の原子力空母「セオドア・ルーズベルト」のほか、海自の護衛艦「ありあけ」、韓国海軍のイージス駆逐艦「ソエ・リュ・ソンニョン」が参加した。

沖縄本島北方の東シナ海に展開しているセオドア・ルーズベルトでの訓練の様子を11日、日韓のメディアに公開。轟音を上げて飛び立ったFA18戦闘攻撃機が上空を旋回し、着艦する訓練が繰り返し行われた。

C2輸送機で「セオドア・ルーズベルト」へ

沖縄本島北方の東シナ海洋上で11日に実施された日米韓の共同訓練。現地を取材するため、記者はヘルメットとライフジャケットを装着し、沖縄県の米軍嘉手納基地からC2輸送機に乗り込んだ。

リベット打ちの金属製座席は全て後ろ向き。窓はなく、どこをどう飛んでいるのか分からない。1時間半ほどすると強い衝撃に襲われ、米海軍の原子力空母「セオドア・ルーズベルト」に着艦した。そこは洋上に浮かぶ飛行場だった。

米海軍によると、飛行甲板の全長は約330メートル。面積は約1万8210平方メートルとテニスコート70面分に相当するが、着陸できる滑走路は約230メートル。飛行場の滑走路とは比較にならないほど短く、甲板に張られた頑丈なワイヤに機体のフックを引っかけ、強引に急制動をかけている。

わずか2秒で時速240キロに到達

飛行甲板では発艦訓練が繰り返された。隊員が合図を送ると、カタパルト(射出機)から立ち上る白い蒸気の中、FA18戦闘攻撃機が耳をつんざく轟音とともに、瞬時に飛び立っていく。機体はわずか2秒で時速約240キロに達するという。

海上自衛隊と韓国海軍も参加した今回の共同訓練。元海将の伊藤俊幸・金沢工業大虎ノ門大学院教授は「強引な海洋進出を進める中国を抑止する観点から非常に意味がある」と指摘する。

軍事的プレゼンスを示す意義

中国海軍は空母「遼寧(りょうねい)」を中心とした艦艇が台湾周辺海域で訓練を重ねる。「戦後最大の危機的状況」(海自幹部)にある日本が米韓と連携し、軍事的プレゼンスを示す意義は大きい。

セオドア・ルーズベルトを中核とする第9空母打撃群司令官のクリストファー・アレクサンダー少将は声明で、訓練について「不測の事態に対応するために不可欠なものである」と強調した。

嘉手納基地に戻るC2輸送機の発艦時、3Gの重力加速度を体感した。血の気が引くような感覚にとらわれたが、戦闘機のパイロットたちはその倍以上の重力加速度に耐え、訓練をこなしている。(大竹直樹)

原子力空母「セオドア・ルーズベルト」のカタパルト(射出機)から発艦するFA18戦闘攻撃機=11日午後、沖縄本島北方の東シナ海洋上(大竹直樹撮影)

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