5月26日は秋田県が定める「県民防災の日」。1月の能登半島地震で関心が高まった「半島防災」を探る。秋田県には、能登半島と似た地形の男鹿半島がある。男鹿市の現状を取材した。

1月に発生した能登半島地震では、石川県で最大震度7を記録した。道路が至る所で寸断され、警察や自衛隊などが現地にたどり着くのに困難を極めた。石川県のまとめでは、最大24地区で3345人が孤立状態となり、山あいでは救助までに2週間以上を要した所もあった。東西南北のうち、3つの方角が海に囲まれた半島。地形の脆弱(ぜいじゃく)性があらわになった。

 秋田県・佐竹知事:
「過疎地、高齢集落、遠隔地で山岳地帯、海岸部にあり、これらが一番凝縮されているのが男鹿半島」

能登半島と地理的条件で共通点が多い日本海に突き出た「男鹿半島」。主要道路は、半島中心部を縦断する国道101号線と、半島の沿岸を走る県道だ。これらの道路が寸断された場合、男鹿市では最大で12の地区や集落で約1450人が孤立する可能性があるとみられている。

こうしたことから、県は大規模地震が発生した際の対応を協議する検討委員会を立ち上げた。能登半島地震を教訓に、支援が届きにくくなる男鹿半島などの防災上の課題を洗い出し、秋田独自の対策を取りまとめる。

 検討委員会の委員長を務める秋田大学・水田敏彦教授(地震工学):
「男鹿半島は、能登半島地震のような地震が発生した場合に、陸路は困難を極めて孤立する所はたくさん出ると予想される。秋田県の地域特性や能登半島地震を踏まえて、経験や教訓を生かして防災・減災について検討を行っていきたい」

孤立する可能性がある集落の1つ、男鹿市戸賀の加茂青砂集落。

41年前の1983年5月26日に発生した日本海中部地震では、秋田県沖を震源とするマグニチュード7.7の地震が発生し、県内では津波で79人が亡くなった。加茂青砂では、遠足で訪れていた北秋田市の旧合川南小学校の児童13人が、津波に流され犠牲となった。

現在、自治会長を務め、41年前を知る大友洋一さん(75)。能登半島地震で明らかになった半島特有の災害リスクを改めて感じ、危機感を強めている。

 男鹿市加茂青砂集落・大友洋一自治会長:
「加茂青砂の住民をいかにして避難させるかが一番頭にある。やはりヘリポートがあればいいなというのが希望」

加茂青砂集落は、男鹿市の沿岸部にある上、背後には急な斜面が迫る。住民は84人で、約7割が高齢者だ。

2016年、自治会が集落の端にある駐車場をヘリコプターが離着陸できる場所にしてもらおうと男鹿市に働きかけたが、広さが足りない上、近くに電線が張られているなどの理由でかなわなかった。

男鹿市のヘリコプターの離着陸場は市内に15カ所あるが、加茂青砂にはなく、最も近い所まで3キロほど離れている上、高低差が目立つ。

 男鹿市加茂青砂集落・大友洋一自治会長:
「以前に高齢女性が倒れたが、加茂青砂にヘリコプターが来られなくて、男鹿水族館近くの駐車場まで運んで行った。いまは、加茂青砂の住民が病気やけがをした時に運んでもらえるようにしてほしい。道路が封鎖されるとヘリコプターを使うしかない」

 男鹿市総務企画部・八端隆公防災監:
「加茂青砂集落は、要件の中にある離着陸場に必要な面積が基準に満たないので、当時は利用できないということになった。ただ、今回の能登半島地震ではヘリコプターがかなり重要視されていたと思う。当時申請された場所以外にも別の場所があるので、県の検討委員会の中で、改めて検討されていく項目になると思う」

男鹿市は、孤立する可能性のある12の地区や集落に、長期保存できるパンや水を注ぐだけで食べられるアルファ米など1540食分を保管することを決め、今後、各集落と協議を進めながら、備蓄施設の整備を進めていきたいとしている。

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