静岡大学の牛山素行教授や日本大学の秦康範教授らの研究グループは、洪水や土砂災害など災害の危険度を地図で色分けしたハザードマップなどの情報が適切に活用されているか検証するため、去年3月、インターネットを通じて都市部の東京と神奈川、埼玉、山間部の多い山梨の合わせて1300人余りを対象にアンケート調査を行い、比較しました。

その結果、土砂災害のハザードマップに掲載されている「土砂災害警戒区域」について、崖崩れや土石流などのおそれがあっても住宅がなければ指定されないことを「正しい」、または「どちらかといえば正しい」と認識していた人は、東京、神奈川、埼玉で9.8%、山梨で10%と、いずれも全体の1割程度にとどまりました。

2021年には広島県安芸高田市で土砂崩れが発生し、車の中から男性が死亡しているのが見つかりましたが、牛山教授によりますと、現場は土砂災害警戒区域に指定されていなかったということです。

また、洪水のハザードマップについて、川沿いの場所でも、浸水想定区域に指定されていなければ災害の可能性は低いという誤った説明を、「正しい」または「どちらかと言えば正しい」と回答した人が、都市部も山間部の多い地域も20%程度だったほか、「わからない」と回答した人も20%余りに上りました。

浸水想定区域の指定は大河川を中心に行われるため、中小河川沿いの低地は指定が追いつかないケースなどもあるということで、牛山教授の調査では1999年からおととしにかけて全国で洪水などで亡くなった人の半数近くが浸水想定区域の外でした。

牛山教授は「ハザードマップの色が塗られていない場所が安全だと受け取られてしまうのは無理もないと思う。ハザードマップは極めて有効な情報だが、よりよく活用するためにどういう見方をすればいいか繰り返し検討を重ね、利用者に丁寧に説明していくことが重要だ」と指摘しています。

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