大雨の災害リスク 67か所が該当
地元で暮らしたいと仮設住宅に移るも…
地域住民と協力し備える自治体も
専門家「大雨の災害リスクと向き合う意識が必要」
【一覧】大雨災害のリスクがある仮設住宅
能登半島地震を受けて、被災地では仮設住宅の建設が進む中、6月22日には北陸の梅雨入りが発表され大雨の時期を迎えています。NHKは、大雨による仮設住宅の災害のリスクについて能登地方の9つの市と町を対象に6月中旬から下旬にかけて取材しました。
その結果、建設予定を含む159か所のうち、42%にあたる67か所がハザードマップなどの洪水の浸水想定区域(想定最大規模)や、土砂災害警戒区域、それに、土砂災害特別警戒区域のいずれかに該当することが分かりました。
<調査結果>▽洪水の浸水想定区域が48か所▽土砂災害警戒区域が27か所▽土砂災害特別警戒区域が2か所▽洪水の浸水想定区域と土砂災害警戒区域の両方に該当する仮設住宅も9か所ありました。
こうした場所が選ばれた理由については、自治体の多くが用地を確保する難しさを挙げ、生活の利便性や被災者の強い要望が背景にあったケースもありました。
また、対策について尋ねたところ、多くの自治体がハザードマップの配付を挙げました。中には、入居者への説明会で避難場所や避難経路を説明している自治体や、地元の町会と連携して災害時の安否確認を行うことにしている自治体もあり、大雨の災害から被災者の安全をどう確保するかが課題となっています。
石川県輪島市の北明さん(77)は、74歳の妻と「横地町第1団地」で生活しています。元日の地震で50年以上暮らした市内の自宅が全壊し、1階で過ごしていた北さんは壊れた建物の下敷きになりました。その後、近所の人たちに救出されましたが胸の骨を折る大けがをしました。妻も地震の直後に転倒して背骨を折り、夫婦で治療を受けながら親戚の家や2次避難所の加賀市のホテルで過ごしていましたが、地元で暮らしたいと、ことし3月に仮設住宅に移りました。慣れ親しんだ場所で過ごす中で、少しずつ落ち着きを取り戻していますが、新たな災害のリスクを抱えています。
仮設住宅から西に100メートルほど離れた場所に「河原田川」が流れていて、過去に氾濫を繰り返してきました。仮設住宅は浸水想定区域にあたり、最大で3メートル浸水するおそれがあります。
また、東側は斜面に接していて、敷地の一部は土砂災害特別警戒区域にあたります。大雨で土石流が起きると命に関わるような著しい被害が出るおそれがあるとされ、複数の災害のリスクに備えなければなりません。
仮設住宅に住む北明さん「雨が強まると怖いと感じます。仮設住宅のみんなが集まって避難のことなどを相談していきたいし、年に1回の訓練なども行ったほうがいいと思っています。助けてもらった命を大切にして災害に備えていきたいです」
地域住民と協力して大雨の災害のリスクに備えようとしている自治体もあります。石川県羽咋市にある「石野団地」には、13戸の仮設住宅が建てられ6月末時点で、16人が入居しています。車を持たない1人暮らしの高齢者や障害者を受け入れるため、スーパーマーケットや医療機関が近く、避難所にも歩いて行ける立地が選ばれました。
しかし、近くには子浦川が流れていて、川が氾濫すると最大で3メートル水につかるおそれがあるとして敷地全体が浸水想定区域の中にあります。このため、市は洪水のハザードマップを配るとともに、入居者に注意を呼びかけています。また、ことし4月には地元の町会から災害時の安否確認などで協力したいと申し出があり、市は仮設住宅に住む人たちの了解を得たうえで入居者の情報を町会に伝え、連携して安全を確保することにしています。
羽咋市災害復興推進室 坂庄啓主任「車を持たない高齢者や障害者にとって、町会の協力がなければ避難が難しい部分もあると思うので、心強いと感じています。市としても町会から要望があれば防災の出前講座を開催したり、避難訓練の時に水害のリスクを周知したりしたいと思います」
仮設住宅の4割あまりで浸水や土砂災害の危険性があることについて、災害のリスクと防災に詳しい静岡大学の牛山素行教授は、用地が限られていることを踏まえるとやむをえず、大雨の災害のリスクと向き合う意識が必要だと指摘しています。そのうえで、行政はハザードマップの情報を住民に周知し、住民は災害のリスクを確認しておくことが重要だとしています。また、洪水の浸水想定区域や土砂災害警戒区域などに含まれていなくても注意が必要だとして警鐘を鳴らしています。牛山教授によりますと、能登半島には比較的小さい川が多く、浸水想定区域の指定が進んでいない可能性があるということです。このため、川の近くで川の縁(へり)と同じ高さの場所は、浸水のリスクがあると指摘しています。さらに、土砂災害警戒区域は住宅が無ければ指定されないためこれまで家が無かった場所に整備された仮設住宅は注意が必要で、勾配が急な斜面の近くではがけ崩れのおそれがあるほか、山間部の小さな渓流沿いでは土石流の危険性があるとしています。
静岡大学 牛山素行教授「平屋の仮設住宅では建物の中にとどまることがベストの対応になるとは限らない。行政が指定した避難場所をはじめ、親戚や知人を避難先として頼ることも事前に検討しておくことがとても重要だ」
※仮設住宅の名称や住所は、自治体の回答をそのまま掲載しています。
▽中島町第1団地(七尾市中島町甲14)洪水の浸水想定区域。▽中島町第2団地(七尾市中島町甲14)洪水の浸水想定区域。▽中島町第3団地(七尾市中島町甲14)洪水の浸水想定区域。▽つるの子公園(七尾市田鶴浜町り部69)洪水の浸水想定区域。
▽河井町第1団地(輪島市河井町20部1-1)洪水の浸水想定区域。▽河井町第2団地(輪島市河井町20部1-1)洪水の浸水想定区域。▽河井町第3団地(輪島市河井町20部1-1)洪水の浸水想定区域。▽河井町第4団地(輪島市河井町16部1番地1)土砂災害警戒区域。▽マリンタウン第1団地(キリコ会館多目的広場)(輪島市マリンタウン6-1)洪水の浸水想定区域。▽マリンタウン第1団地(マリンタウンサブグラウンド)(輪島市マリンタウン6-1)洪水の浸水想定区域。▽マリンタウン第2団地(輪島市マリンタウン3-1)洪水の浸水想定区域。▽マリンタウン第3団地(輪島市マリンタウン1-1)洪水の浸水想定区域。▽山岸町第2団地(仮名)(輪島市山岸町に37)洪水の浸水想定区域と土砂災害警戒区域。▽山岸町第1団地(輪島市山岸町は43-1)洪水の浸水想定区域。▽宅田町第2団地(輪島市宅田町23-1)洪水の浸水想定区域。▽宅田町第3団地(輪島市宅田町7-37)洪水の浸水想定区域。▽杉平町第1団地(輪島市杉平町鬼田25)洪水の浸水想定区域。▽鳳至町第1団地(輪島市鳳至町堂金田1番地)洪水の浸水想定区域と土砂災害警戒区域。▽輪島港第2団地(輪島市鳳至町鳳至丁160)輪島港第3団地(輪島市鳳至町197)洪水の浸水想定区域。▽堀町第1団地(仮名)(輪島市堀町3字3-1)洪水の浸水想定区域。▽横地町第1団地(輪島市横地町6-123)洪水の浸水想定区域と土砂災害警戒区域。土砂災害特別警戒区域に敷地の一部が含まれるものの建物は該当しない。▽町野町第1団地(輪島市町野町粟蔵川原田42番地)洪水の浸水想定区域。▽町野町第2団地(輪島市東大野出村91-1)洪水の浸水想定区域。▽清水第1団地(輪島市門前町清水7の1番地)洪水の浸水想定区域。▽道下第2団地(輪島市門前町道下1-123)洪水の浸水想定区域。▽小伊勢町第2団地(輪島市小伊勢町広田44-1)土砂災害警戒区域。▽小伊勢町第3団地(輪島市小伊勢町丸垣内21-4)土砂災害警戒区域。▽下黒川町第1団地(仮名)(輪島市下黒川町19-1)土砂災害警戒区域。▽二俣町第1団地(輪島市二俣町19-32)土砂災害警戒区域。▽三井町第1団地(輪島市三井町長沢1-20-2)洪水の浸水想定区域と土砂災害警戒区域。▽三井町第2団地(輪島市三井町長沢1字34番地2)洪水の浸水想定区域と土砂災害警戒区域。▽里町第2団地(輪島市里町32字20番地)洪水の浸水想定区域と土砂災害警戒区域。▽浦上第1団地(輪島市門前町浦上チの1番地1)洪水の浸水想定区域と土砂災害警戒区域。▽七浦第1団地(輪島市門前町五十洲4の1)土砂災害警戒区域。▽阿岸第1団地(輪島市門前町是清イ1)土砂災害警戒区域。▽舘第1団地(輪島市門前町舘口の30)土砂災害警戒区域。▽大野町第1団地(輪島市大野町菰沢2番地3)土砂災害特別警戒区域。
▽飯田町第2団地(珠洲市飯田町13の部87番地1)洪水の浸水想定区域。▽飯田町第3団地(珠洲市飯田町8の部71番地4)洪水の浸水想定区域。▽城山街区公園(珠洲市若山町出田)洪水の浸水想定区域と土砂災害警戒区域。▽飯田高校下バスロータリー(珠洲市野々江町モの部39番地1)洪水の浸水想定区域。▽野々江民有地3(珠洲市野々江町シの部52番地)洪水の浸水想定区域。▽野々江町第5団地(珠洲市野々江町ヒの部5番地)洪水の浸水想定区域。▽宝立町第3団地(珠洲市宝立町鵜島21字59番地1)土砂災害警戒区域。▽旧上黒丸小学校グラウンド(珠洲市若山町上黒丸10-34)土砂災害警戒区域。▽旧日置中学校グラウンド(珠洲市折戸町ヌ部8番地)土砂災害警戒区域。▽道の駅狼煙駐車場(珠洲市狼煙町テ部16)土砂災害警戒区域。▽大谷小中学校グラウンド(珠洲市大谷町1字78番地)土砂災害警戒区域。▽高屋町漁港(高屋町地内)土砂災害警戒区域。
▽石野団地(羽咋市石野町ヘ27番地1)洪水の浸水想定区域。
▽鶴ケ丘団地(内灘町字鶴ケ丘1丁目437番地)洪水の浸水想定区域。
▽しか第1団地(志賀町堀松辰45番地1)洪水の浸水想定区域。▽しか第2団地(志賀町高浜町ヨの1番地6)洪水の浸水想定区域。▽とぎ第5団地(志賀町広地ヌの23番地)土砂災害警戒区域。
▽二宮あおば台第1団地(中能登町二宮あおば台11番地外)洪水の浸水想定区域。
▽川島第1団地(穴水町字川島アの48番地)洪水の浸水想定区域。▽川島第2団地A(穴水町字川島キの13番地)洪水の浸水想定区域。▽川島第2団地B(穴水町字川島キ1)川島第2団地C(穴水町字川島キ26)川島第2団地D(穴水町字川島キ23)洪水の浸水想定区域。▽川島第3団地(穴水町字川島タの52-1)洪水の浸水想定区域と土砂災害警戒区域。▽鵜島団地(穴水町字鵜島ハの20番地)洪水の浸水想定区域。▽港町団地A、(穴水町字大町い131-2)港町団地D(穴水町字大町い111)洪水の浸水想定区域。▽港町団地B、(穴水町字大町い128)港町団地C(穴水町字大町い116)洪水の浸水想定区域。▽白山団地(穴水町字川島い83)洪水の浸水想定区域。▽下唐川第1団地(穴水町字下唐川ち1番地)土砂災害警戒区域。▽下唐川第2団地(穴水町字下唐川と101)土砂災害警戒区域。▽河内団地(穴水町字河内に34-2)土砂災害警戒区域。
▽柳田野球場周辺用地その1(能登町柳田礼)洪水の浸水想定区域。
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