神奈川 平塚 駐車場の車20台ほどが水につかる被害
浸水した車の修理依頼や問い合わせ 相次ぐ
浸水リスク 指摘されていた地域も
水につかった車 エンジンをかけてよい?【専門家に聞く】
“車が浸水したらエンジンは基本かけない”
“ボンネットまで水につかったら絶対にエンジンかけないで”
“駐車場所もハザードマップで確認を”
神奈川県平塚市の川のすぐ近くにある駐車場では、8月30日、20台ほどの乗用車がドアの半分あたりまで水につかっていました。近くに住む人によりますと、この日、午前5時ごろ、駐車場に異常はありませんでしたが、およそ2時間後の午前7時ごろには、茶色く濁った水が一面に広がり駐車場とすぐ脇を流れる川との境がわからなくなって車が水につかっていたということです。冠水から4日後となる9月3日午後、被害に遭った軽乗用車1台がレッカー車で販売会社へと運ばれていきました。
この車を所有する71歳の男性によりますと、車の床より上まで泥水につかってエンジンがかからなくなり、廃車にすることを決めたということです。男性は、「台風がまだ近づいておらず、川幅を広げる工事も行われたばかりだったため、ここまで水が来るとは思わなかった。11年乗った車で愛着もあり悲しいです。持病もあり、車が生活や通勤に欠かせないので買い直さなければいけない」と話していました。
車が浸水する被害が相次いだ神奈川県平塚市内の自動車整備工場や販売店には、水につかった車の修理の依頼や問い合わせの電話が相次いでいるということです。このうち、市内にある整備工場では、これまで浸水した車の修理に関する問い合わせは数年に1度程度でしたが、台風10号の影響で大雨となった翌日の8月31日には、水につかった車の修理に関する問い合わせが6件あったということです。問い合わせは、駐車場に車を止めていたところ急に水位が上がってきたとか、冠水したアンダーパスに突っ込んでしまったなどという内容で、中には、泥水が車内やエンジンルームにまで入り込んだ車もあったということです。
NHKのこれまでの取材で、少なくとも九州から関東の6つの県で車が水につかったり冠水した道路を走行したりした事例があり、その現場は自治体のハザードマップで浸水のリスクが指摘されていた地域だったことがわかりました。気象庁によりますと、台風10号は、日本列島をゆっくりとした速度で進み、九州から関東に大雨をもたらし、一部の地域では総雨量が900ミリを超える記録的な大雨となりました。各地で浸水の被害が発生し、NHKの取材では、少なくとも大分県、香川県、三重県、岐阜県、静岡県、神奈川県のあわせて6県で、車が水につかったり、冠水している道路を走行したりしていた事例がありました。このうち、神奈川県平塚市では8月30日、川のすぐ近くにある住宅街の駐車場が浸水し、20台ほどの乗用車がドアの半分あたりまで水につかっていました。また、三重県松阪市では8月29日、国道で道路が冠水し、多くの車が大きな水しぶきを上げながら走行していました。
これらの場所をNHKが確認した被害情報や映像を地図に載せた「災害情報マップ」を使って、自治体のハザードマップで浸水のリスクが指摘されている範囲と重ね合わせると、すべての地域で川の近くや周囲より低い土地などの浸水リスクが指摘されていたことがわかりました。
浸水を防ぐための対策や、水につかってしまった車はすぐにエンジンをかけてよいのかなど、JAF=日本自動車連盟東京支部の認定セーフティアドバイザー・由水雅也さんに聞きました。
Q.全国各地で車が水につかる被害が多発しています。そもそも水につかった車はすぐに動かして大丈夫なのでしょうか。A.災害の直後に車を使いたい気持ちはあると思うんですけれども、車が水につかった場合、そのままエンジンをかけるとバッテリーが漏電して車両火災が発生するおそれがあります。大前提として、いきなりエンジンキーを回したりエンジンのボタンを押したりしないように注意してください。
Q.車が水につかった場合は、どのように対応すればよいのでしょうか。A.作業を自分で行うのが難しい場合は、JAFなどにご相談ください。自分で対応できる人は、取り扱い説明書を確認したうえで車のボンネットを開いてエンジンルームに水が入り込んでいたら、火災を防ぐためにバッテリーのマイナス側のターミナル(配線)を外してください。その後も、バッテリーとターミナルが接触しないように絶縁の処置をしてください。車を修理するのか、廃車にするのかについては、自動車販売店に連絡し相談をしてください。
Q.具体的に車がどの程度水につかったらエンジンをかけないようにすればいいでしょうか。A.少なくともボンネットのあたりまで水につかってしまった場合は絶対にエンジンをかけないようにしてください。それより下の場合もエンジンルームの中を見て水につかっていないかを確認するなどして、安全を考慮して車を動かさないようにしてもらいたいと思います。さらに、ハイブリッド車やEV=電気自動車の場合は、高電圧の電気系統も使われていて車両火災に加えて感電するリスクもあるため、むやみに触らずにJAFや自動車販売店にご相談ください。
Q.今後も台風が発生したり、大雨が降ったりするおそれがあります。車の浸水を防ぐための対策について教えてください。A.特に駐車車両では自治体が作成しているハザードマップを確認して使用している駐車場が浸水のリスクがあるかどうか、事前に確かめておくことが重要です。その上で、必要に応じて、車をリスクのある場所からあらかじめ避難させておくといいと思います。また、自宅以外の出先などで車を止めることもあると思いますが、そうした場合も駐車場が低地にないかどうかを確認して、リスクを極力避けるようにしていただきたいです。加えて、やむをえず大雨に遭遇したときは川沿いや海岸沿い、高架下や立体交差のアンダーパスなど、周囲より低い場所には絶対に侵入しないようにして、う回のルートを検討するようにしてください。目の前の道路が冠水していても運転席からは水位の高さがわかりづらいケースがあり、「走れるだろう」と侵入して車が動かなくなることもあるので低地はなるべく避けるように意識していただきたいと思います。
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