Q.今回のような地震と大雨の「複合災害」で被災が繰り返されています。住民に与える影響をどう分析していますか。
「複合災害で受けるストレスは単純に足しあわせたものではなく、1度目の被災より何倍も強まると考えられます。元日の地震から大変な時期を乗り越えつつあって、復興に向けた足取りを感じられるような時期だったと思います。希望が出てきたときに全部奪われるようなことがあると『今までの努力はなんだったのだろうか。何をやってもだめなのではないか』というむなしさや絶望感に襲われてしまうことが非常に多いです。これは『学習性無力』=“無力感を学んでしまう”という心理状態です。うつのリスクを抱える方がいても全くおかしくありません。さらに今回、かなり疲弊した時期に起きてしまったのも問題です。これを乗り越えるためには大きなエネルギーが必要になると思います」
仮設の浸水=“安全感の喪失”
Q.仮設住宅の浸水も相次ぎました。入居していた人たちへの心理的な影響はどのように考えていますか。
「被災した自宅や避難所から仮設住宅に移ると、安全が保障され、『助かった』と感じられます。仮設住宅が被災したということは、“安全感”を2度喪失したことになります。東日本大震災の際も安全な場所や長く住める場所を探して転居を繰り返した人が体調を崩すケースがありました。1度目の災害から時間がたたないうちに仮設住宅で被災した事例はあまりなく、被災者の心のダメージは深刻だと思います」
Q.どんな支援が必要になるでしょうか。
「被災者はなかなか自分から『困っているから助けてほしい』と言わないので、積極的な訪問など、丁寧なケアをする必要があります。もちろん、被災者の方も眠れないことなどがあれば声をあげてほしいです」
支援者へのケアも不可欠
Q.一方、支援する側の被災地の自治体職員や医療従事者といった人たちへの影響も心配です。
「支援者の疲弊感は住民の方より強い場合が多いと思われ、なるべく早く手当てをする必要がありますがなかなか難しいのが実情です。復興を成し遂げなければいけない、命を守らなければいけないという責任感があるほか、被災者がつらいのはわかっているからなかなか弱音を出せず『やめたい、助けてほしい』という声をあげられず、追い込まれてしまうことがあります」
Q.どのような心のケアが いま必要だと思いますか。
「自治体職員が倒れることは住民にとって最も影響が大きく、支援者を支援することは結果的に住民の支援にもなります。しかし、支援システムが整備されていないのが日本の現状です。心のケアセンターをはじめとする専門職の組織が支援者をきちんと支援することが、災害時には非常に重要なことだと考えています」
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