岩手山の噴火警戒レベルが「2」になるのは初めてで、これを受けて地元の自治体は、登山道を閉鎖して入山規制を始めました。
岩手山では、ことし2月ごろから山の膨張を示すと考えられる地殻変動が観測されていて、9月26日の衛星による観測でも岩手山西側の大地獄谷周辺で、ごく浅いところの膨張を示すと考えられる変化が確認されたということです。
このため仙台管区気象台は岩手山で火山活動が高まっていて、今後、噴火が発生するおそれがあるとして、2日午後3時、火口周辺警報を発表して噴火警戒レベルを「1」から「火口周辺規制」を示す「2」に引き上げました。
そのうえで岩手山西側の火口から、おおむね2キロの範囲では、噴火に伴う大きな噴石に警戒するよう呼びかけています。
岩手山の噴火警戒レベルが「2」になるのは、噴火警戒レベルの運用が始まった2007年以降、初めてです。
これを受けて、地元の滝沢市、八幡平市、それに雫石町の3つの自治体は、登山道に避難する場所がないことから、事前に協議していたとおりに、登山道の入り口に看板を設置したり、入り口をロープでふさいだりして入山規制を始めました。
このうち雫石町の担当者は「登山者の安全を守るための入山規制だとご理解いただきたい。噴火は予想できない災害なので、ハザードマップを確認するなど、備えを進めてほしい」と話していました。
また、滝沢市の担当者は「入山規制という形になるが、その分は、ふもとなどで観光していただけるとありがたい」と話していました。
岩手山とは
岩手山は、盛岡市の中心部から北西に20キロほど離れた標高2038メートルの活火山で、「西岩手」と「東岩手」の2つの火山からなります。
山頂にかけては複数の登山道があり、夏から秋を中心に、多くの登山者が訪れます。
周辺のふもとには「八幡平」と呼ばれる高原が広がり、スキー場や宿泊施設、キャンプ場や温泉が点在していて、観光地としても知られています。
1998年には ふもとで震度6弱の揺れ観測
岩手山では1919年を最後に噴火は起きていませんが、1997年から2004年ごろにかけて、火山性地震がたびたび増加し、山の膨張を示す地殻変動が観測されたほか、噴気活動も活発になりました。
特に1998年には地殻変動や急激な火山性地震の増加に加え、ふもとでマグニチュード6.2の地震が発生して、雫石町で震度6弱の揺れを観測するなど、活動が活発となり緊張が高まりました。
その後、6年間にわたって入山が規制されましたが、噴火に至らず、次第に活動は低下しました。
過去の噴火活動
江戸時代には、マグマそのものが噴き出すマグマ噴火が2回発生しています。
このうち、1686年には「東岩手」の山頂火口から噴火して、現在の盛岡市中心部でも火山灰が降ったほか、積もっていた雪が溶けたことで泥流が発生し、ふもとの家屋が被災しました。
1732年の噴火では「東岩手」北東の山腹から3キロ余りにわたって流れ出た溶岩が現在も残っていて、「焼走り熔岩流」として知られています。
1919年には「西岩手」の大地獄谷で、地下にある水がマグマなどで熱せられ、急激に水蒸気となって噴き出す水蒸気噴火が発生し、噴石が近くの登山道に飛散しました。
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