ことし1月の能登半島地震で、警察や消防の到着に時間がかかり、地元の消防団が救助活動にあたったケースも多かったことなどから、全国で消防団など地域の防災力を強化する取り組みが進められています。

熊本県菊陽町では6日、消防団員およそ30人が参加して救助訓練が行われ、8年前の熊本地震の救助活動のデータを分析して開発された、傾斜などを調整して倒壊した建物のさまざまな状況を再現できる大型の装置が初めて使われました。

1階部分が倒壊して高さ70センチほどの狭い空間に閉じ込められた人がいるという想定で行われ、団員たちは、救急救命士などの指導を受けながら、建物の傾きを見て、さらに倒壊するおそれがないか確認したあと、木材を差し込んで固定し、安全を確保するなどして救助にあたっていました。

ふだんは旅行会社に勤めているという消防団の46歳の副団長は「救助の訓練は初めてで、熊本地震の時も実際に起こるとパニックになったので、迅速に安全に救助するには訓練は大事だと思いました。どこにでもあるような道具で救助できたので自信にもつながったし、自分たちの街は自分たちで守りたいと思いました」と話していました。

専門家 “地域を守る消防団が訓練し備えること重要”

今回の訓練で消防団の指導に当たった、倒壊した建物からの救助に詳しい上武大学の加古嘉信客員教授は「災害が起きると、警察や消防がすべての被災現場に迅速に到着することは物理的にできないので、地域を守る消防団が実戦的な訓練に取り組み備えることが重要になってくる。今回の訓練でかなりのことが身についたと思う」と話していました。

また、消防団が救助にあたる際の安全管理については、「消防団の安全が最も大事であり、安全管理が必要だ。今回の訓練では、建物の1階部分が倒壊している状況で安全をしっかりと評価しながら、倒れにくい処置をして救助が必要な人に近づくことが大きなテーマだった。消防団が迅速に救助を展開していくことは、町の人的被害を減らすことになり、災害に強い町づくりにつながると思う」と話していました。

国は地域の防災力さらに強化へ 取り組み

能登半島地震を受けて、国は、地元の消防団を中心とした地域の防災力をさらに強化しようと、取り組んでいます。

能登半島地震では、被災地までの道路が寸断されたことなどから、警察や消防などの救助隊の到着までに時間がかかったケースが多く、石川県輪島市や珠洲市では、合わせておよそ600人の消防団員が、津波からの避難誘導や倒壊した家屋で救助を行うなど、重要な役割を果たしたということです。

これを受けて、国は、消防団などの地域の防災力をさらに強化しようと、救助活動に必要な資機材の整備などを進めています。

具体的には、
▽段差や狭い道路などでも対応できる小型の消防車両に、救助用の資機材を搭載して自治体に無償で貸し出すほか
▽小型で軽量のチェーンソーやエンジンカッターなど、救助用の資機材を整備する費用を補助するなどの検討が行われています。

一方で、総務省消防庁によりますと、全国の消防団員は、ことし4月1日時点でおよそ74万7000人と10年間で11万人余りが減少しています。

このため国は、
▽女性や若者に消防団への参加を促すことや
▽訓練を地域の実情に応じて、より実戦的なものにすることなど
自治体に対して工夫していくよう呼びかけています。

消防行政に詳しい関西大学の永田尚三教授は「能登半島地震をみても、消防団の重要性はますます高まっているが、人口の減少で団員の減少も避けられず、質を重視した消防団の活性化が必要だ。これまでは初期消火や火災対応への役割が期待されていたが、災害が多くなった近年では、災害時に行政が対応できない部分の補完として、救助などの役割も期待されている。少数でも災害対応が可能な、高度な専門性を持った消防団の体制構築も検討する必要がある」と指摘しています。

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