6割が洪水で被災か
NHKは能登地方の豪雨で珠洲市、輪島市、能登町で亡くなった14人と行方が分からなくなっている1人について、映像や証言、現地調査をもとに静岡大学の牛山素行教授とともに被災した状況を分析しました。
災害の種類では、洪水による被災とみられるのが6割にあたる9人、崖崩れなど土砂災害とみられるのが6人でした。
洪水は山間部で崩れた土砂や流木が川に流れ込んで被害が拡大した事例が多く、最も被害が集中したのが輪島市を流れる塚田川でした。
住宅が流されるなどして喜三翼音さん(14)など住宅やその周辺にいたとみられる4人が亡くなりました。
このほかの洪水の被災者も小さな川のそばで被災したとみられていて輪島市門前町では川のそばにある住宅にいた75歳の女性が氾濫に巻き込まれて亡くなったとみられています。
また、能登町久田の川沿いの道路では行方が分かっていない輪島市の30代の女性が乗っていたとみられる乗用車が見つかっています。
牛山教授の調査では道路には浸水した痕跡が少なくとも50センチ確認され、平行して流れる小さな川があふれて局所的に強い水の流れが発生した可能性があると指摘しています。
家族によりますと女性は早朝、輪島市の仮設住宅から穴水町の職場に車で出勤し、職場からは「大雨のため昼ごろに早上がりした」と連絡があったということです。
家族の携帯電話の通信状況が悪くなっていたことから「家族の状況を心配して急いで帰ろうとしたのではないか」と推測しています。
洪水の被災場所 市や町のハザードマップに示されず
被災場所の災害リスクが市や町のハザードマップに示されていたのは、土砂災害は6人中5人で、洪水による被災場所は、いずれもハザードマップには示されていませんでした。
塚田川では去年県が浸水想定区域を指定し公表しましたが、市のハザードマップにはまだ反映されていません。
また、塚田川では住宅が流失しましたが県の浸水想定区域には住宅の流失のおそれを示す「家屋倒壊等氾濫想定区域」は指定されていませんでした。
そのほかの河川はハザードマップの作成が義務づけられていない小さな川でした。
大河川に比べて中小河川は数も多く、ハザードマップの整備が十分に進んでいないのが実情です。
一方、今回洪水被害があった場所は地形的にはすべて護岸などと高さが同じ、「低地」と呼ばれる地形でした。
牛山教授は今回浮き彫りになった中小河川沿いのリスクはハザードマップだけでは伝わりにくいとして身の回りに同様の地形がないか確認してほしいと訴えています。
“低地” 決してひと事ではない
牛山教授は「山間部の小さな川沿いの『低地』は全国に多くあり決してひと事ではない。特に山間部の小さな川は氾濫すれば水深が深く、流速は速くなって水の力が大きくなりやすい。ハザードマップは重要な情報だが、浸水の想定がなかったとしても川の近くの低地は洪水の可能性があると考え備えることが重要だ」と話しています。
※災害の種類は取材と牛山教授の調査をもとに分類。県発表などと異なるケースもあります。
取材:金沢局 山尾和宏 山本伊織 松葉翼、名古屋局 内山裕幾、社会部 老久保勇太
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