エコノミークラス症候群は同じ姿勢を続けることで血栓ができ肺に詰まる病気で、新潟県中越地震では車の中で寝泊まりする避難生活をしていた被災者が死亡するケースが相次ぎました。

被災地で検診にあたった医師で新潟大学の榛沢和彦特任教授によりますと、この地震で7人がエコノミークラス症候群で死亡し、地震の直後は検診した被災者の30%余りに血栓が見つかったということです。

その後も毎年検診を続け、新型コロナの影響で態勢を縮小する前の2019年までの状況を分析したところ、初診で血栓が見つかった人の割合は5%から10%の間で推移し、地震が起きていない地域のおよそ4%と比べて高いことが分かりました。

車で寝泊まりした人だけでなく、避難所で生活した人からも血栓が見つかっていて、榛沢特任教授は、当時の厳しい生活環境が長く影響していると指摘しています。

また、血栓が見つかると、その後病気になるリスクが高く、
▽エコノミークラス症候群になった人は血栓が見つかっていない人の73倍
▽脳梗塞は4倍
▽心筋梗塞はおよそ2倍にのぼったということです。

榛沢特任教授は「一度厳しい避難生活を経験して血栓ができるとなかなか消えない。足がむくむなど違和感があれば病院に相談してほしい。この20年で避難所の環境は基本的に変わっていないため、ベッドやトイレ、温かい食事がすぐに提供される体制づくりが必要だ」と話しています。

血栓 能登の被災者からも相次いで見つかる

血栓は、地震と豪雨で厳しい避難生活を強いられている石川県能登地方の被災者からも、相次いで見つかっています。

榛沢特任教授はエコノミークラス症候群の被害を防ぐため、能登半島地震の直後から被災地に足を運び検診を行っています。

榛沢特任教授によりますと、検診した人のうち血栓が見つかった割合は、
▽珠洲市で13.8%
▽穴水町で9.3%
▽輪島市の中心部で8.4%、門前町で8.7%
▽能登町で6.7%
と地震が起きていない地域のおよそ4%と比べて高くなりました。

このうち、輪島市門前町の避難所では、エコノミークラス症候群になった被災者も見つかり病院で治療を受けたということです。

一方、能登町では他の自治体に比べて血栓が見つかった割合が低く、榛沢特任教授は段ボールベッドの整備など避難所の環境整備が早かったことが要因ではないかとしています。

能登地方では先月豪雨災害が起きたため、再び避難所に戻った人や新たに避難生活を余儀なくされた人もいます。

このため、榛沢特任教授は今月上旬に再び輪島市に足を運び、複数の避難所で検診を行いました。その結果、血栓が見つかった人の割合は13%にのぼったということです。

検診で血栓が見つかったという女性は「ここに来なければ見つからなかったのでよかったです」と話していました。

榛沢特任教授は「地震の後に我々が見つけた血栓はほんの一部だ。血栓があることを知らないままの人もいるし、豪雨災害で新たに血栓ができる人もいる。少しでも足に違和感をもったら、早めに医療機関を受診してほしい」と話しています。

長岡 行政が地域コミュニティーを支援

住宅の倒壊や崖崩れなど大きな被害が出た長岡市では、高齢化などを背景に災害時に住民どうしで助け合う「共助」の取り組みの維持が課題となるなか、行政が地域コミュニティーを支援する取り組みを進めています。

20年前の新潟県中越地震では最大で震度7の激しい揺れを観測し、68人が亡くなったほか、12万棟余りの住宅が被害を受け最大10万人以上が避難生活を余儀なくされました。

23日は大きな被害が出た長岡市や小千谷市で追悼式が行われ、参加者が地震が発生した午後5時56分にあわせて黙とうします。

被災した地域の中には人口減少や高齢化に直面しているところも多く、長岡市の川口地区では現在の人口が3700人余りと、20年前の3分の2まで減少しています。

地区の一部の自主防災組織では防災訓練の参加者が大幅に減るなどしていて、災害時に住民どうしで助け合う「共助」が弱まることを懸念する声も出ています。

このため長岡市は、住民が地域の課題を話し合う組織を市内の全域に立ち上げたほか、地域コミュニティーを支援する専門の職員を各支所に配置するなど支援の体制を強化しています。

長岡市危機管理防災本部の入澤義和部長は「コミュニティーが地域を維持する根幹なので、行政ができることを考えて支援していきたい」と話しています。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。