先週の大雨で、日南市松永では山あいを流れる福谷川が増水し、70代の男性が軽乗用車ごと流され、亡くなりました。

消防によりますと、当時現場は道路と川の境目が分からず、腰のあたりまで浸水していたということです。

各地の水害の現場を調査している静岡大学の牛山素行教授は、映像などから、現場は谷底平野と呼ばれる山あいを流れる小さな川沿いで、平地の幅が狭いため水深が深くなりやすく、傾斜もあるため流速も出ていたのではないかと分析しています。

大雨の際、車で移動中に被災するケースは全国で相次いでいます。

先月21日の石川県能登地方の豪雨では、能登町の山あいで川沿いの道路を車で移動していた30代の女性が亡くなったほか、7月には山形県新庄市で救助に向かったパトカーが流され警察官2人が亡くなっています。

牛山教授が、去年1年間に起きた全国の風水害による死者・行方不明者26人を分析したところ、車の移動中や、動けなくなった車から出て被災したとみられる人は全体の半数近い12人にのぼっています。

牛山教授は「車で移動中の被災は毎年必ず起きている。全国ではかなりの数になるが、それぞれが離れた場所で発生しているため大変さが伝わりにくい」と指摘したうえで、「流れがある水に立ち入ると、車でも命を落とす可能性がある。雨風が激しい時は、浸水しているところに近づかないことを大原則に行動することで被害を軽減できる」と呼びかけています。

“ハザードマップで色が塗られていなくても注意”

日南市で車が流された付近は、自治体のハザードマップでは、浸水が想定される地域に指定されていませんでした。

洪水のハザードマップは大きな河川から整備が進められてきたため、小さな川では洪水のリスクがあってもまだ指定されていなかったり、そもそも想定の対象にならなかったりするケースがあります。

一方、NHKと牛山教授が先月21日の石川県能登地方の豪雨で亡くなった人の状況を調べたところ、洪水で被災したとみられる9人は、いずれも中小河川沿いで被災したとみられ、自治体のハザードマップには含まれていませんでした。

牛山教授は、日南市と能登地方で亡くなった人の現場はいずれも「低地」という共通する地形だと指摘しています。

「低地」は川の護岸などと同じ高さの地形で、日南市の現場も川のふちと変わらない高さに道路が通っていて、水があふれやすいとしています。

牛山教授は「小さい川だから安全だ、ということは全くない。ハザードマップで示されている危険性を確認したうえで、色が塗られていなくても安心しないでいただきたい。川のすぐそば、川と同じくらいの高さの場所は洪水の可能性があると考えてほしい」と話しています。

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