石川県有数の温泉地である七尾市の和倉温泉では、20以上ある旅館やホテルのほとんどで今も通常営業を再開する見通しが立っていません。
このうち温泉旅館「美湾荘」は地盤ごと沈み込み傾いた建物の一部を建て替えることにしていて、営業再開は早くとも2026年の秋以降になる見通しです。
国と県は和倉温泉の雇用維持のため従業員に一時的に別の地域の施設に移ってもらい、賃金を出向元と出向先で分担する「在籍型出向」の取り組みを進めていますが、従業員の多くは地元を離れて働くのは難しいということです。
この旅館では国が休業手当の一部を助成する雇用調整助成金などを活用しおよそ70人の従業員の雇用を維持していく方針ですが、この旅館の助成金はことし11月以降は利用できなくなるということで、営業再開まで継続した支援を求めています。
「美湾荘」の多田直未社長は「建て替えに補助金も出ますが原材料高騰もあり不安です。従業員の雇用維持のためにも再開まで長く支えてほしい」と話していました。
輪島 素もぐり漁の男性 漁の再開を目指す
石川県輪島市で「海士(あま)」として素もぐり漁をしていた20歳の男性は、能登半島地震のあと県内の避難先にある物産展の販売スタッフとして働きながら家業である「あま漁」の再開を目指しています。
輪島市の井上岳登さん(20)は代々、貝や海藻をとる素もぐり漁の「あま」の家に生まれ、高校を卒業したあと男性の「海士(あま)」として働いてきました。
地震のあとは加賀市の旅館に2次避難し、能登地方の特産を集めた物産展の販売スタッフとして働いています。
物産展は加賀市の温泉旅館でつくる協議会が避難している人たちに働く場所を提供しようと開いていて、井上さんは漁のできない冬場に輪島市の朝市通りの露店で働いていた経験を生かし、能登地方の特産品や自分がとった海産物を販売しています。
家族で希望している仮設住宅への入居の見通しは立っていないということで、井上さんは避難生活が長びく中で収入を確保することが差し迫った課題だと感じています。
井上さんは「避難生活中は収入がなくずっと貯金を切り崩しているので、働くことができて助かっています。今後の不安はありますが、早く輪島に戻り『あまさん』として仕事を再開したいです」と話していました。
珠洲 老舗菓子店 4か月ぶりに営業再開
能登半島地震で被災した石川県珠洲市の老舗の菓子店が1日、4か月ぶりに営業を再開しました。
珠洲市上戸町にある創業111年の菓子店「メルヘン日進堂」は、地震の後に断水が続いて営業ができなくなり、住民や支援に訪れた人たちの休憩場所として店舗を開放してきました。
4月、店の断水が解消したことから出勤できるスタッフで少しずつ菓子づくりを始め、商品の種類を減らして営業時間を縮小しながらも1日、4か月ぶりに店を再開しました。
午前10時の開店と同時に再開を待ちわびていた地元の人たちが次々に訪れ、看板商品のバウムクーヘンやできたてのシュークリームなどを買い求めていました。
店を訪れた30代の女性は「いつも食べ慣れていた味はほっとします。店の再開は珠洲が戻ったという感じがしてうれしいです」と話していました。
いまも避難所での生活が続いている店主の石塚愛子さん(46)は、市内では断水が続いてまだ営業が再開できない店が多いことに複雑な思いがあるとしたうえで「応援の声をいただいてできるところから進めていきたいと思いました。変わらぬ味を守っていきたいです」と話していました。
店は当面は不定休で、午前10時から午後3時まで営業するということです。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。