およそ50頭の乳牛を飼育する能登町の西出穣さん(36)の牧場は、地震で2棟ある牛舎のうち1棟が傾いて全壊し、別の1棟も屋根瓦が落ちたり、壁がはがれたりする被害を受けました。

停電の復旧が早く、機械の故障がなかったため、生乳の生産はまもなく再開できたということで、出荷量はほぼ地震の前の水準まで戻っています。

しかし、搾った生乳をタンクに送るパイプの位置がずれるなどして作業に影響が出ていて、西出さんは、できるだけ早い時期に修理や再建を行うことを検討しています。

牛舎を再建する際は、これまでより規模を大きくし、飼育する牛の頭数も増やしていきたいと考えています。

西出さんは「地震で酪農をやめる人の話も聞いています。能登で酪農が成り立たなくなるのではという危機感があり、今後も一定以上の生産量を確保するためにも施設を増強できるならしたいと思っています」と話していました。

一方で、牛舎の再建などにあたって補助金を活用する場合、地震前と同じ規模であれば自己負担が1割なのに対し、規模を拡大すれば、制度上、自己負担が5割となってしまう可能性が高いということです。

西出さんは「歴史的な円安などで非常に厳しい状況が続く中で増産にかじを切り、なおかつ5割の補助で着手するとなれば判断は難しいです。県や町にどのぐらい補助してもらえるかを見ながら考えたいと思います」と話していました。

能登地方 人口1割が農林水産業に就業

石川県の能登地方では1次産業が基幹産業のひとつとなっていて、県によりますと、人口の1割が農林水産業に就業しているということです。

馳知事は「農林水産業の復旧なくして能登の創造的復興はない」などと述べ、国と県、被災した自治体が負担する補助金の活用を促してなりわいの再建を後押しする考えを示しています。

このうち農業については、農地や農業用施設の復旧に力を入れていて農地の復旧にかかる費用に対する補助率は、自治体によって異なりますが、9割から10割となっています。

水路やため池などの農業用施設の復旧の補助率は97%から100%、10割です。

さらにトラクターなどの機械の修理や購入にかかる費用と、農業用ハウスなどの施設の修理や再整備にかかる費用への補助率は、いずれも9割となっています。また畜産業についてもさまざまな支援制度があり、被災した畜舎などの修理や建て直しに対する補助率は9割です。

畜舎の建て直しなどに際し、地震前にはなかった機械を導入して能力を高めたり、規模を拡大したりする場合には、補助率は5割と低くなります。

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