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<幸福が存在するのは「いま」だけ。不幸の原因を取り除いたら、幸福の追求に全力を傾けるべきだ。運動、頭の体操、心の刺激、他人への親切......幸せに生きるヒント>

幸福になるには、いちばん幸福を感じる時を見つけ、その時間を増やすこと。そして、いちばん不幸だと感じる時間を見つけ、その時間を減らすこと。

シンプルで簡単なようでいて、簡単ではない?

「利益の80%は、顧客の20%がもたらす」「成果の80%は、費やした時間の20%から生まれる」として有名な「80対20の法則」を使えば、もっと幸福にもなれると、起業家、投資家、経営コンサルタントであるリチャード・コッチは言う。

コッチの著書『人生を変える80対20の法則』は、20年以上にわたって世界中で読み継がれてきたロングセラー。その最新版である『増補リニューアル版 人生を変える80対20の法則』(リ仁平和夫・高遠裕子翻訳、CCCメディアハウス)から一部を抜粋し、3回にわたって紹介していく。

3回目となる今回は、「幸福」について。

※抜粋第1回:100年以上前に発見された「タイパ」の極意...「時間の20%を有効に使え」
※抜粋第2回:人間関係を変えるには、まず「大切な20人」のリストを作る。すると上位4人に「重要度」の80%が集中する

◇ ◇ ◇

アリストテレスは言った。「人間が成すことはすべて、幸福になるためだ」と。

だが、長い歴史のなかで、われわれはアリストテレスの言葉に耳を貸そうとしなかった。アリストテレスが、もっと幸福になれる方法を指南し、幸福と不幸の原因を分析してくれていれば役に立ったかもしれない。

80対20の法則を幸福にもあてはめることができるだろうか。できる、とわたしは思う。

ほとんどの人は、幸福の大半がごく短い時間に起きるということを実感しているのではないだろうか。幸福の80%は時間の20%に集中する、というのが80対20の法則の仮説の一つだ。

この仮説を検証するべく、たくさんの友人に聞いてみた。時間を分けて考え(これまでの人生を年単位に分け、1年を12カ月に分け、1カ月を4週間に分け、1週間を7日に分け、1日を24時間に分け)、幸福を感じた時間がどのくらいあったかを答えてもらったのだ。友人の3分の2の答えが、80対20に近い不均衡のパターンを示していた。

とはいえ、仮定は誰にでも通用したわけではない。友人の3分の1の答えは、80対20のパターンにあてはまっていなかった。彼らの幸福は、時間上にほぼ均等に分布していた。

注目すべきは、この3分の1の友人のほうが、幸福のピークが人生のごく一部に集中している友人よりも、はるかに幸せそうにみえたことだ。

常識的に考えると、うなずける。人生の大半を幸せに暮らしてきた人のほうが、満ち足りた気持ちでいるに決まっている。幸福がごく短期間に集中している人は、一生をとおしてみると、それほど幸せとはいえないのだ。

これはまた、この本で一貫して述べてきた考えとも合致する。つまり、80対20の法則に照らすと、われわれの生活には無駄が多く、改善の余地が大いにある、ということだ。ただ、それ以上に重要なのは、80対20の法則をうまく活用すれば、もっと幸福になれる、といえる。

幸福への二つの道

・いちばん幸福を感じているときをみつけ、その時間をできるだけ増やす。

・いちばん不幸だと感じているときをみつけ、その時間をできるだけ減らす。

幸福に直結する時間を増やし、それ以外の時間を減らす。もっと幸福になるには、不幸な状態をなくすのが近道だ。これは、さほど難しいことではない。これまでの経験から、不幸になりそうな状況を避けるだけでいい。

自分の幸福に直結しない活動(あるいは不幸に直結する活動)については、どうすればその活動を楽しめるかを順序立てて考える。うまくいけば、それでよし。うまくいかない場合、そうした状況を避ける方法を考えればいい。

(中略)

幸福になる毎日の習慣

不幸の原因を取り除いたら(少なくとも、それを取り除く行動計画を立てたら)、幸福の追求に全力を傾けるべきだ。そのために、何より大切にしなければならない時間が「いま」である。

幸福とは味わうべきものであり、幸福が存在するのは「いま」だけだ。過去 の幸福を思い出すことはできるし、将来の幸福を夢見ることはできるが、幸福をかみしめ、心ゆくまで味わえるのは「いま」しかない。

必要なのは、毎日を幸福に過ごす習慣を身につけることだ。それは、運動を日課に取り入れたり、規則正しい食事をしたりするのと同じことだ。わたしが毎日実践している7つの習慣を(中略)まとめた。

幸福になる7つの習慣

①運動をする
②頭の体操をする
③心を刺激する、芸術的な刺激を受ける、瞑想する
④他人に親切にする
⑤友人と楽しいひとときを過ごす
⑥自分にご褒美をあげる
⑦自分を祝福する

幸福な一日を送るのに欠かせないのが運動だ。汗を流したあとは、いつも気持ちがいい(汗を流している最中は、そうでもないが)。

身体を動かすとエンドルフィンが出るからではないだろうか。このホルモンには抗鬱作用があり、気分をよくする麻薬に似た効果がある(このホルモンをいくら出しても身体に害はないし、何といってもお金がかからない)。

よって、運動は日課にするべきだ。日課にしないと、億劫になってやらないものだ。わたしは仕事のある日は、たいてい出かけるまえに運動をすることにしている。予定外の仕事が入って、運動の時間が削られるのを避けるためだ。

出張が多いなら、チケットを取る際に運動の時間も確保しておく。必要とあれば、スケジュールを変更してでも運動する。会社の重役なら、午前10時までは会議を入れないよう秘書に命じておく。そうすれば、運動の時間がたっぷり取れ、その日の仕事に備えられる。

次に重要なのが、知的な遊びだ。それは仕事で十分得られるという人もいるだろうが、そうでないなら、毎日、頭の体操をしたほうがいい。頭を鍛える方法はいろいろあるので興味に応じて選べばいい。

クロスワード・パズルを解くのもいいし、本や雑誌を読むのもいい。また、抽象的な話題について知的な友人と最低でも20分おしゃべりするのもいい。日記をつけたり、短いエッセーを書いてみたりするのもいい。要するに、頭を使うことなら何でもいいのだ(いくら高尚な番組でも、テレビを見るのは、あまり頭を使うことにならない)。

3番目に重要なのが、こころの刺激である。大それたことをやる必要はない。毎日1時間くらいを、想像力と精神に影響を与えるために使えばいいだけだ。

コンサートや美術 館、劇場、映画館に行くのもいいし、詩集を読むのもいい。朝日や夕日を眺めるのもいいし、星を見るのもいい。あるいはもっと刺激を受ける場所、野球場や政治集会、教会などに出かけてもいい。公園をぶらぶらするのもいいし、何もしないで瞑想にふけるのもいい。

4番目に大切な習慣は、他人のために何かをやることだ。「他人のため」と言っても、大がかりな慈善活動を行う必要はない。時間切れになっている使用中のパーキング・メーターに小銭を入れてあげたり、迷っている人に道を教えてあげたり、といったささやかなことでいい。ほんのちょっとした親切で、気分がずいぶんよくなるものだ。

5番目に大切な習慣は、友人との息抜きだ。少なくとも30分は、誰にも邪魔されずにくつろぎたい。どんな形であってもいい。コーヒーを飲みながらおしゃべりするもよし、酒や食事を楽しむのもよし、散歩しながら語らうもよしだ。

6番目に大切な習慣は、自分をもてなすことだ。忘れないように、自分が好きなこと、楽しいと思うことのリストをつくっておくといい(心配ご無用。そのリストは誰にも見せる必要がないのだから)。毎日少なくとも1回は、自分を喜ばせよう。

最後に、自分を祝福することを習慣にしよう。一日の終わりに、その日も幸福になる習慣を守れたことをお祝いするのだ。

目的は幸せになることなのだから、5つの習慣を守れたら上等だ。5つ守れなくても、何か大切なことを達成したり、楽しく過ごせたりすれば、ああ、今日もいい一日だったと自分を祝ってあげることが大切だ。



『増補リニューアル版 人生を変える80対20の法則』
 リチャード・コッチ 著
 仁平和夫・高遠裕子 翻訳
 CCCメディアハウス

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※抜粋第1回:100年以上前に発見された「タイパ」の極意...「時間の20%を有効に使え」
※抜粋第2回:人間関係を変えるには、まず「大切な20人」のリストを作る。すると上位4人に「重要度」の80%が集中する