第28回手塚治虫文化賞(朝日新聞社主催)の贈呈式が6日に都内で開かれ、受賞者が喜びを語った。

 マンガ大賞の「プリニウス」は、古代ローマの博物学者が主人公。作者のヤマザキマリさんは「なぜDNAに一抹たりともローマ人の血が入っていないお前がこんなにローマのことを描けるんだとよく言われる」と明かし、「火山があり、地震があり、そして津波があり、様々な被害とともに歩んできたイタリア半島」と日本の共通点を語った。もう一人の作者とり・みきさんは幼い頃の手塚作品との出会いを振り返り、「勧善懲悪ではなく、高みに引いた人類を俯瞰(ふかん)するような視点」や「物語自体を外側から見るようなギャグ」に感化されたと回顧。「そう考えると幼稚園時代から呪いをかけられているようなもので、感慨深いものを感じます」と話した。

 新生賞の坂上暁仁さんによる「神田ごくら町職人ばなし」は、江戸の職人技を緻密(ちみつ)な描写で見せる作品。担当編集者から「画力に振り切った作品を」と言われた結果、「桶屋(おけや)がただ桶を作るだけの話ができました」と笑いを誘った。

 短編賞の「ツユクサナツコの一生」はマンガ家の日常を描く作品。作者の益田ミリさんは、主人公のせりふ〈自分が好きや思うことは、一生、死ぬまで自分だけのもんや〉を引用し、「私も好きなことを続けていられる今に感謝し、これからも描き続けてまいりたい」とスピーチした。特別賞は今年40周年を迎えたコミティア実行委員会に贈られた。

 (山崎聡)

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