福井鉄道で現役を終え解体予定だった車両が、全国でも珍しい運転シミュレーターとして生まれ変わった。実際に使用していた電車の運転席に座り、鉄道区間から路面区間への乗り入れなどを疑似体験することができる。
本物の装置を使用したシミュレーター体験
福井・越前市にある福井鉄道の北府(きたご)駅は国の登録有形文化財に指定されている。趣あるレトロな建物の中には「鉄道博物館」があり、1945年頃に使用されていた腕章や、自動改札の普及後はすっかり見かけなくなった「改札ばさみ」などが展示されている。
この記事の画像(36枚)シミュレーターは、この“博物館の目玉”として設置された。
1974年製の「モハ602」は、名古屋の地下鉄を走った後1998年に福井鉄道に入線し、2018年に現役を引退。解体予定だったが、運転シミュレーターとして生まれ変わった。
本物の車両で実際の運転装置を使用するシミュレーターは全国でも珍しく、さらに鉄道区間と路面電車区間の2種類を体験できるのは、ここだけだという。
鉄道ファン意外も「気軽に楽しんで」
運転席に座り、目の前のモニターを見ながらアクセルやブレーキなど、実際に使用していた装置を操作して、鉄道の運転を疑似体験できる。「こちらがマスコン(マスターコントローラー)、車でいうとアクセルです。手前に引くことで電車が進みます。右側はブレーキハンドルで、これを操作することで進行している電車を止めることができます」と操作方法を教わる。
コースは「たけふ新駅(越前市)」から「田原町駅(福井市)」の上下線で、それぞれ普通電車と急行電車の選択肢があり、初級と上級のコースも選ぶことができる。初めての人でも運転がしやすい初級コースを記者が体験してみた。
「出発進行!」と威勢の良い掛け声で出発したものの…カーブや勾配に合わせてのスピード調整が難しく、常に担当者にブレーキを補助してもらう状態。何とか駅のホームで停止したが、手に汗握る体験となった。
路面電車区間ともなると、すぐ横を車が走るので緊張感があるのに加え、車用の信号に惑わされ、停車や発車の判断が鈍る。今回試した初級コースは、速度や勾配などを画面で確認しながら運転できるが、上級コースは本物のメーターを見ながらの運転になる。子供だけでなく、鉄道に詳しいファンもトライする価値はありそうだ。
福井鉄道・鉄道営業部の白崎正臣さんは「全国の鉄道ファンはもちろん、あまり電車に興味がない人でも気軽に楽しんでもらいたい」と話す。さらに「将来、福井鉄道の運転手になりたいと思ってもらえるのが一番いい」と期待を込める。
現在、シミュレーターは、車両工場の見学や車両の撮影会などのイベントの際にのみ体験することができるが、7月からは予約制で受け付けを始める予定になっている。
(福井テレビ)
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