個展を開いている絵本作家の阿部海太さん=大阪府豊中市寺内2のblackbird booksで、2024年6月9日午後3時51分、岡橋賞子撮影

 大阪府豊中市で新刊・古書を扱う「blackbird books」の開店10周年を記念し、画家・絵本作家、阿部海太さん(38)の個展「パレードを見送る日々」が開かれている。30日まで。

 阿部さんは絵本制作や本の装丁に取り組み、2021年には「ぼくがふえをふいたら」(岩波書店刊)で「第26回日本絵本賞」を受賞。鮮やかな色彩の幻想的な作品にはファンが多い。開店後2年ほどたった頃、神戸に住んでいた阿部さんが店を訪れて以来、店主の吉川祥一郎さん(44)と交流が続いている。

 新型コロナウイルス禍が社会を襲った時、自宅で自分が変わらず絵を描いていることに「居心地の悪さ」のようなものを感じたと語っていた阿部さん。現在も「もどかしさがあることに変わりありません」と語る。

本をきっかけにした交流が続いている絵本作家の阿部海太さん(左)と、書店を営む吉川祥一郎さん。後ろは阿部さんの作品=大阪府豊中市寺内2のblackbird booksで、2024年6月9日午後4時7分、岡橋賞子撮影

 「ロシアによるウクライナ侵攻や、もはや虐殺と言えるイスラエルのガザ侵攻が続く中、絵の存在意義や、絵を描くことの意味を考え続けている」。現在住んでいる岐阜県郡上市はカモシカやキツネもすむ自然豊かな環境。その静かな里山で、過酷な状況にいる世界の人々を思い「一層、やるせなさを感じる」と、はがゆさを隠さない。

 22年には第1子が誕生、その後、夏に郡上へ引っ越しした。「世界の未来を憂える気持ちが強くなり、子どもを描くことも増えるなど自分自身、大きく変化した」。東京、神戸をへて、今は自然を享受する一方、都会にはなかった不便さも受け入れ、日常を営んでいる。「画家にとって絵を描いていない時間をどう過ごすかは大切。それが自分の作品にどんなふうに表れていくか、自分でもとても興味がある」と語る。

 今回、同店のイメージを基に、新たに油絵を描いた。友人への温かいまなざしに満ちた10枚の絵が、本棚の間のスペースで店を彩っている。

 午前10時~午後7時。24日は休み。問い合わせは同店(豊中市寺内2、電話=06・7173・9286、メール=info@blackbirdbooks.jp)。【岡橋賞子】

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