積もった雪が「雪見ろうそく」で幻想的に照らされた庭園=向瀧提供

 国の文化審議会は24日、会津東山温泉の旅館「向瀧(むかいたき)」(福島県会津若松市東山町湯本)の庭園を登録記念物(名勝地)にするよう文部科学相に答申した。旧会津藩の湯治場を1873(明治6)年に受け継いだ平田家が代々整備し、四季折々の風景を演出。「造園文化の発展に寄与した」と評価された。今後、官報に告示され、正式に登録される。

 向瀧は、明治以降に整備した玄関、客室棟、離れの計4棟が既に登録有形文化財になっている。東京大安田講堂などとともに、1996年に始まった制度の登録第1号だった。今回新たに登録されるのは、湯川沿いの高低差12メートル、奥行き40メートルの傾斜地を生かした立体的な回遊式庭園で、広さ1105平方メートル。庭園は4棟に囲まれ、どの棟からも観賞できる。

紅葉が見ごろを迎えた向瀧の庭園=向瀧提供

 春には桜が咲き、夏は湯川から水を引き込んだ池の周りを蛍が飛び交う。秋は紅葉。冬には、庭に積もった雪を2001年から「雪見ろうそく」で照らす演出を施す。6代目の平田裕一社長(63)はSNS(ネット交流サービス)を積極的に活用してこれらの風景を国内外に情報発信。庭園の様子は動画共有サイト「ユーチューブ」でライブ配信している。

 「会津若松は四季がはっきりしていて、春夏秋冬で違った色合いを見せてくれる土地柄。その美しさをここに凝縮したいと社員一同で日々の整備に励んできた。評価されて非常にうれしい」と平田さん。今後も「この江戸時代から伝わる風情を後世に伝えるため、草刈りや雪囲い、水路の掃除といった日々の手入れをきちんと続けていきたい」と話す。

 また、同審議会は、07年に国の史跡に指定された二本松城跡(二本松市郭内)についても、近年の発掘調査で存在が明らかになった藩校「敬学館」跡と内大手地区を史跡に追加指定するよう答申した。【錦織祐一】

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