「文庫化したら世界が滅びる」なんて都市伝説があった「百年の孤独」が新潮文庫で26日刊行された。ノーベル文学賞作家、ガブリエル・ガルシア=マルケスの代表作で、マジックリアリズムという言葉を広く知らしめた小説だ。ジャングルの奥に開拓されたマコンド村を舞台に、呪われた一族の波乱に満ちた100年の歴史が描かれる。

 原著は1967年刊。72年に新潮社から鼓直(つづみただし)訳の単行本が出て以来、装丁を替えながら版を重ねてきた。安部公房、大江健三郎、中上健次といった名だたる作家が影響を受け、今回の文庫解説でも筒井康隆さんが激賞している。

 なかなか文庫にならないのは、世界を守るためというより、単行本が売れ続けているからだろうと邪推していたのだが、累計部数は約30万と思ったほどではない。46言語で5千万部も売れているのに。

 新潮社文庫出版部の菊池亮さんによると、文庫化はマルケスの没後10年のタイミングからという。「どんな作家も亡くなったとたんに忘れられていく。10年もたてばなおさらです。後世に残すために、今回の文庫化に踏み切った」

 いい作品が必ずしも古典になるわけではない。残そうという思いが古典を作るのだ。(野波健祐)

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