作家山田太一の長編小説「異人たちとの夏」が36年ぶりに再映画化された。舞台を1980年代の日本から現代の英ロンドンに置き換えた、海外リメーク版だ。

 主人公は、ロンドンで暮らすアダム。死別したはずの両親と再会するという奇妙な体験をする。それと同時に謎めいたマンションの隣人ハリーと関係を深めていく。息子より年下の両親が暮らす実家、たった2人だけが住んでいる高層マンション。幻想的に映し出される世界観に白昼夢でも見ている気分になる。

 双方との交流を重ねるうちにアダムの心身に変化が起きていく。今回、大きく改変された同性カップルの設定だが、関係性の相互作用という物語のテーマがより豊かになっている。霧のようにはかなく、あまりに切ない幕切れは鮮烈だが、心を通わせ、注ぎ合う関係の尊さを美しく説いた映画である。(スターシアターズ・玉城愛鈴)

◇ミハマで上映中

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