桜坂劇場で働き始めた頃、「ドキュメンタリーは嘘をつく」というドキュメンタリーを見た。うそをまるで本当のことのように伝えることは容易だということが、実演を交えて描かれていた。その的確さが逆に怪しく思えてくるほどに、分かりやすかった。ドキュメンタリー=真実だとぼんやり考えていた脳が、高速で動き出し、世の中のいろんなことが怪しく思えてきて「全てを疑う」という言葉の意味を明確に理解した。

 さて、この映画。すでに結審している和歌山毒物カレー事件の判決に異を唱え、林眞須美氏の無罪を訴える問題作。前述した通り、疑うことを覚えた私が、この訴えをうのみにすることはない。ただ、彼女の罪の有無の議論とは別のところに、この映画のエンターテインメント性はある。肩肘張らず、ご覧いただけたらうれしいです。

(桜坂劇場・下地久美子)

◇同劇場で上映中

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