日本近現代政治史の第一人者で、保守論客としても知られた歴史学者で東京大名誉教授の伊藤隆(いとう・たかし)さんが19日、病気で死去した。91歳だった。葬儀は近親者で行った。

 東京生まれ。東大大学院を修了し、1971年から東大文学部で助教授、81年から教授を務めた。

 76年に雑誌「思想」に寄稿した論文で、昭和戦前期日本の政治体制を「ファシズム」と自明視する立場に疑義を呈し、論争を引き起こすなど、当時主流だったマルクス主義史観に批判的な立場を取った。「昭和初期政治史研究」「大正期『革新』派の成立」「歴史と私」など著書多数。

 昭和天皇の側近木戸幸一の日記など、近現代政治史の一級史料を多く発掘し、公刊。「佐藤栄作日記」(全6巻、朝日新聞社刊)を監修した。記録にないエピソードを政治家のインタビューから掘り起こす「オーラルヒストリー」の開拓者として、岸信介、竹下登、後藤田正晴らの回顧録を手がけた。

 晩年は保守派の論客として活動。「自虐史観」の脱却を唱える、97年の「新しい歴史教科書をつくる会」設立に参加した。同会の分裂後は育鵬社の歴史教科書の執筆者を務めた。

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