「ODD Foot Works Billboard Live YOKOHAMA」のステージに立つPecori(8月9日) Chiaki Machida

<新曲「INZM」の作詞も担当したPecoriが語る、3人それぞれの魅力とは? 曲作りやレコーディングの裏側を独占インタビューで聞く>

本誌8月13/20日号『世界に挑戦する日本エンタメ』特集したNumber_i(平野紫耀、神宮寺勇太、岸優太)が、9月23日に初のフルアルバム『No.I』(ナンバーワン)をリリースするのに先立ち、8月19日からリードトラックである「INZM」(イナズマ)の先行配信をスタートさせた。

「INZM」の作詞をNumber_iと連名で担当しているのが、音楽グループ「ODD Foot Works」で活躍する著名ラッパーのPecori(30)だ。Number_iのデビュー曲「GOAT」の作詞も担当したPecoriに、メンバー3人のアーティストとしての魅力や彼らの関係性について、ジャーナリストの田澤映が聞いた(取材は6月)。


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──昨日のレコーディングに立ち会わせていただきましたが、あれは曲制作のどのあたりの段階だったのでしょうか。

1度録音し終わった後の予備日、調整する日でした。Number_iに関しては、メンバーが歌って本REC(本番の録音)した後でも「もうちょっと修正したい」みたいのが出てくるんですよ。その、各部分の修正について立ち会うっていう、そういう日でした。

──岸さんが、あるフレーズだけで何回もリテイクしていました。あんなに丁寧にやるんだと、びっくりしたのですが。

Number_iはクリエイティビティーが高いんです。俺も別に「これでいいんじゃね?」ってだいぶ前から思っていても、やっぱりメンバーが納得いくのが一番いいから、やれるだけやっています。楽しそうですね。「もう一回いいですか?」「もう一回いいですか?」って。

──3人にパートを振り分ける際、それぞれの声質などにどういう特性があると見ていますか。

低音帯域は紫耀(平野)ですね。俺もどっちかって言うと、けっこう喉がザラついている声で、低いんですよ。それを一番再現できるのが平野で、最近はもう、俺のガイドか平野の声か分かんなくなるぐらい似てきている。だから一番どしっと構えた、シンプルにストレートなラップみたいなものは平野がいいと思ってます。神宮寺は裏声とか、高い帯域がすごい得意で、KC(岸)はぶちかまし。一番おもろいっすね。

──一番ラップが上手いのは誰ですか。

一番格好いいラップができるのは平野なんですけど、俺が入れたガイドと全く違うことをするのがKC(岸)で、これがめっちゃいいんですよ。そんな譜割り、知らないぞ俺、みたいな。

何回やり直しても、「ここはこうだよ。タンタンタンタンだよ」って言っても、「オッケーっす、やってみます」とか言って、毎回ぜったい違うんですよ。だからもう、俺が伝えたこの「タンタンタンタンタン」ていうリズムは、彼の中では「タンタ、タタタン」になっていて。

これはけっこうギフトというか、持って生まれた感覚。それは一番大事っすよね。神宮寺は、最近一番かっこよく見せられるキーを見つけたんで、そこを伸ばせばいいし、シャウト系とかガヤ(合いの手やシャウト)は一番いいです。声がとおるので。

──それぞれのアーティストとしての自我は、どういう形で発揮されていると見ていますか。

メンバーがそれぞれ3曲くらいずつプロデュースを担当しているんですけど、昨日レコーディングした「INZM」は神宮寺が担当。例えば神宮寺に「INZMの大元のコンセプトはメンバーと共有したの」って聞くと、共有してないと。意外に紫耀(平野)もKC(岸)もそこに踏み入らない。

多分、競い合ってるっていうか、自分の担当の曲は他のメンバーが担当している曲より格好よくありたい、みたいな。「BON」のときは紫耀(平野)がたくさんしゃべっていたけど、俺の気のせいかもしれないけど、神宮寺の意思を尊重して現場を見守っているような感じがありました。


それは別にいいことである気もするし、自分のクリエイティビティーは、プロデュース担当っていう制度のおかげでちゃんと出せてるんじゃないかな。

──レコーディングを見ていると、3人とPecoriさんが対等な形で、チームでいいものを作ろうとしている、緊迫感がありながら和気あいあいとやっている感じが伝わってきました。1年ぐらいの付き合いにはとても見えなかったのですが、彼らと仕事をする上で、普段Pecoriさんが付き合っているミュージシャンとは話す言語が違う、というような難しさはなかったですか。

そもそも本当に言語感覚が違うような人達だったら、たぶんもう一緒にやってないと思います。そこはやっぱり彼らの人柄というか、ずっと業界にいつつも、普通のお兄ちゃんみたいな感覚が持てるのは、結構すごいことだと思います。自分がもし同じ学校のクラスメイトだったら、普通に友達になってると思う。

──3人は海外への挑戦を掲げていますが、Pecoriさんはそんな彼らをどう見ていますか。

いま海外を意識していることで言うと、紫耀(平野)はたぶん和をテイストにするっていうところが一番メインにあって。あと自分としては、英詞は逆にあまり使わない、というのを意識していますね。

やっぱり自分の国の言語が一番説得力があるし、意外とこの3年くらいで海外でも日本語の曲がヒットするのが当たり前になってきている。言語の壁はなくなってきた、だから思いっきり日本語でやっていいという気がしている。

あとはもう、頑張れって思ってます。歌唱力ももっと伸びるだろうし、今後も練習、努力、勝利、友情......。

──バンドやグループに離合集散はつきものですが、Number_iの3人の関係性についてはどう見ていますか。

めっちゃバランスいいなと思います。やっぱり、3人含めて全員で打ち合わせをしている時でも、話をリードするのは紫耀(平野)で、2人は紫耀の意見を尊重しながらも、自分たちの意見を出していく感じ。

KC(岸)はたぶん3人の中で一番音楽とダンスが好きで、一番作品にも介入してくるし、音楽も一番聞いてるんじゃないかな。


神宮寺は3人のまとめ役。紫耀(平野)は思ったこと全部言って、アイデア出しとか発想力はたぶん一番あるんじゃないかな。そのたくさんのアイデアを精査するのが神宮寺。それはちょっと無理でしょとか、意外と精査をするのが上手い。昨日のレコーディングでも、ここは違うかもなあと俺が思ったことも、だいたい神宮寺と一致している。一番見えてる感じがしますね。

とにかく、バンドやグループにとって、バランスというのはすごい重要なんです。音楽うんぬんだけじゃなくて、メンバー間のバランスというのはほんと大事。3人はとてもいいと思います。

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Pecori/ODD Foot Works

Pecori(撮影:Takao Iwasawa)  

<PROFILE>
縦横無尽に時代性やジャンルを飛び越えていくヒップホップグループ、ODD Foot Worksのラップ担当。多様なビートにアプローチする変幻自在のフロウと独創的な言語感覚で愛を語るリリックは日々進化している。またフックでは普遍的なポップスセンスとメロディメイカーぶりを発揮。比類なき存在感を放つラッパーとして注目を集めている。

2022年6月、ソロラッパーとしての活動を開始。RAU DEFを客演に迎えた「Brain Stripe」をデジタルリリースした。他アーティストのフィーチャリングゲストとしては[Alexandros]、オカモトショウ(OKAMOTO'S)、androp、和久井沙良、imai、RhymeTubeなど幅広いバンド/ソロアーティスト/ラッパーの楽曲に多数参加。さらに近年はソングライター/プロデューサーとしてSUPER EIGHTやASPなどの楽曲を手がけ、ラップのディレクションを含む楽曲プロデュースで名を連ねた2024年元旦リリースのNumber_iの1stデジタルシングル「GOAT」が様々なチャートやメディアを席巻、巨大なバズを起こした。

【LIVE Information】
ODD Foot Works Presents「TOKYO INV.」
2024.9.20(Fri)SHIBUYA Spotify O-nest
OPEN/19:00 START/19:30 ※ゲストアクトあり(当日発表)
チケット https://w.pia.jp/t/tokyoinv2024/
More Information https://oddfootworks.com/

Number_i 「INZM」 (Official Music Video)

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