大竹史朗さん(右)とゲスト出演する黒川泰子さん=明珍美紀撮影

 米ニューヨーク在住のギタリスト、大竹史朗さんのコンサート「ドブレ・アーの嘆き」が25日、東京都渋谷区のセルリアンタワー東急ホテル2階「ジェイジーブラット」で開かれる。南米アルゼンチンのフォルクローレ(民俗音楽)を起点に独自の音楽領域を追求する大竹さんが、同国出身の作曲家でバンドネオン奏者だったアストル・ピアソラへのオマージュ(敬意)を込めたオリジナル曲などを演奏する。

 「ドブレ・アー」はピアソラが愛用した、独のメーカー「アフルレッド・アーノルド(AA)」製のバンドネオンのことだ。「ピアソラの調べをギターで表現しよう」と大竹さんが創作した新曲「ドブレ・アーの嘆き」が今回、初演される。

 大竹さんはアルゼンチンのギターの巨匠、アタウアルパ・ユパンキの演奏に触発されて1988年、20代半ばで渡米し、翌89年にアルゼンチンを訪れて晩年のユパンキに直接、手ほどきを受けた。

 「ユパンキに会う前、ブエノスアイレスの街を歩いた。この国は多民族国家で街は移民たちの生きるエネルギーにあふれていた」と振り返り、ピアソラの曲を何度も聴くうちに「彼の音楽の源泉はブエノスアイレスにある」と感じたという。

 また、当日はスペインの詩人、ガルシア・ロルカの作品の一節に曲をつけた「イェルマ~ラ・ロメリーア~」も発表する。ゲストにシャンソン歌手の黒川泰子さんを迎え、大竹さんのギターの音色と黒川さんの朗唱がステージで融合する。「ロルカはフランコ独裁政権によって処刑されたが、アルゼンチンの芸術家らがロルカの戯曲を上演するなどしてその芸術を守った。僕の中でピアソラとロルカがつながった」

 大竹さんは、ユパンキの詩をもとに作曲した「ヒロシマ~忘れえぬ町」で92年に本格デビューした。「ユパンキ以外で自分の支えとなったのがピアソラとロルカ。今度のステージではこの2人の宇宙的で普遍的な世界観をみなさんに届けることができれば」と話す。

 昼(午後1時半開演)と夜(同6時半)の2部制。料金など詳細は大竹さんのファンクラブのホームページで。【明珍美紀】

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