「愛って何なんだ!」と叫びたくなる。毎朝しゅうとの機嫌を伺い、パートに出て、身ぎれいにして、家も整えて、夫にとっての心地よさに腐心していたら、夫は若い女と浮気して別れたいという。夫から最後に放たれるあのセリフに、私は桃子と一緒に泣く。そばから見れば夫は気弱なだけで、しゅうとも息子に少し過保護なだけで悪気はないのかもしれない。もちろん、桃子とて完璧なわけじゃない。それでも私は桃子がいとおしい。

 それぞれの立場から言えば、誰もが正しいのだろう。誰しも望むものを手にする権利はあるし、その際に多少なりとも人を傷つけることもある。それを十分理解した上でなお、私は桃子と一緒に泣く。どう頑張っても報われなかった思いを一緒に抱きしめて泣く。

 人は言葉にとらわれ、苦しみ、言葉に救われる。

(スターシアターズ・榮慶子)

◇サザンプレックスで上映中

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