仙台フィルハーモニー管弦楽団で首席トロンボーン奏者を務める紺野駿人さんは、仙台フィル初の現役音大生の団員。さらに楽団史上最年少、注目の若手奏者です。梅島アナウンサーの取材です。
9月上旬、仙台市青葉区で開かれた仙台フィルハーモニー管弦楽団の定期演奏会。この日は「炎のマエストロ」と呼ばれ世界で活躍する指揮者「コバケン」こと小林研一郎さんの下、モーツァルトやチャイコフスキーの交響曲が披露されました。その中で、トロンボーン首席奏者を務めているのが、仙台フィル最年少団員、紺野駿人さん(22)です。現在、東京芸術大学4年生。現役音大生が仙台フィルの団員となったのは約50年の楽団の歴史で初めてのことです。
福島県いわき市出身の紺野さん。現在は泉区に住み、音楽活動に励んでいます。トロンボーンを始めたのは8歳の時。小学校の吹奏楽部に入ったことがきっかけでした。高校まで吹奏楽部でトロンボーン奏者としての腕を磨いたのち、プロの演奏家を目指して東京芸術大学に進学。19歳で仙台フィルのオーディションに「史上最年少」で合格し、プロとしてのキャリアをスタートさせました。
プロの演奏家たちは自宅に防音設備を備えて練習する人も少なくありませんが、学生でもある紺野さんは自宅にそうした設備はなく、カラオケ店を中心に練習しているといいます。
実はここ、紺野さんを応援する店舗のオーナーが営業前の時間帯に無償で使わせてくれているのです。
紺野駿人さん(22)
「すごくうれしいし、すごく励みになります」
「小さい頃から(出身地の)いわきに仙台フィルが公演で来ていて聴きに行っていたので、すごく憧れがありました」
Q、団員に決まった時の気持ちは?
「現実味が無くて、本当に?みたいな感じでした。最初はすごく緊張したが、コンサートが終わった後のお客さんのフィードバックなど、自分がここにいていいという雰囲気を感じている。最年少なので、フレッシュな時にいろいろチャレンジして仙台の音楽文化を発展させられたらいいと思う」
最年少の団員、紺野さんを周りも応援しています。
ライブラリアン(楽譜管理) 水野広明さん
「みんな本当に応援しています。こういうふうにした方がいいと意見出し合っている」
トランペット首席奏者 浦田誠真さん
「本当に彼、素晴らしいので育てるというよりは対等。対等どころかこちらが頑張らなければという感じです」
バストロンボーン 山田守さん
「まだ若いので、これから年を重ねるごとにいろいろなものを吸収して仙台にこんな若い首席トロンボーン奏者がいると。有名になってほしいし、優秀なプレーヤーになってほしい」
定期演奏会当日。出番が迫る中、直前まで調整を続けます。
紺野駿人さん(22) Q、開演前は緊張する?
「あまりしないですね。自分が楽しんで演奏して、コバケンさん(小林研一郎さん)とできる喜びをお客さんに伝えられたらいいと思う」
この日は「炎のマエストロ」小林研一郎さんの指揮ということもあってチケットは完売。満員の聴衆がオーケストラを迎えます。演奏するのはチャイコフスキーの交響曲第5番。トロンボーンも随所で重要な役割を担います。
「炎のマエストロ」の情熱的な指揮に応え、圧巻の演奏を披露した仙台フィル。
満員の聴衆からの鳴りやまない拍手の中、マエストロ・小林研一郎さんが楽団員一人一人を丁寧に称え、聴衆に応えます。
本番を終えた後は仙台フィル名物のお客さんのお見送りに向かいます。お客さんからかけられる一つ一つの言葉は紺野さんの今後の糧となります。
定期演奏会の聴衆
「最後の方、涙止まらなくなっちゃった」
「思わずブラボーって言ってしまった。初めて。本当に素晴らしい。世界に通用する演奏ですよ」
プロのオーケストラ奏者としては、まだ駆け出しの紺野さん。一方で、仙台フィルの一員として寄せられる期待は高まっています。
コンサートマスター 西本幸弘さん
「若くてもリーダーシップを感じる、首席としての音をコンサートマスターの席からも感じるので期待のホープと演奏面では思う」
事業部 我妻雅崇部長
「頼もしい、うまい、この二つに尽きると思う。この若さで素晴らしい音色をお持ちというのが何よりも素敵と思っている。世界に誇る、そして市民に愛されるオーケストラの一員として引っ張っていけるような存在になれたらいいと思う」
生まれ育った東北の地でプロ奏者として歩み始めた紺野さん。スタッフのこんな本音に笑顔で応えました。
「引き抜かれないでね。ずっと仙台にいてね」
「はい。骨を埋める覚悟で」
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