われわれ人間も、食物連鎖の一部だ。にもかかわらず、食物連鎖と生活を共にすることができずにいる。排泄(はいせつ)物や死体を見ること、臭いを嗅ぐこと、そばにいること、を否定し、少しでも早く遠ざけようとする。
そんな人類の生活に、一石を投じるべく、食物連鎖を生活に取り入れることに挑戦する人々のドキュメンタリー。映し出されるのは、動物や食物の「死」が育む命の姿。全ては土に還り、新たな命の糧となる。
生命の神秘を前に、人はなぜ「汚れ」という概念を抱くに至ったかを考える。私自身、嗅覚を研ぎ澄ませ、とにかく臭いものから距離を取ることをやめられない。
危険を察知し、回避する、という点では、本能的行動だと言えなくもないが、汚れを受け入れ、共存できる人の方が、豊かで、自由で、健やかで、そして何より、清らかに思えてくる。(桜坂劇場・下地久美子)
◇桜坂劇場で上映中
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