大分・別府の老舗映画館に名優らが集結――。俳優、石橋蓮司さんの出演作を3日間かけて上映する「石橋蓮司映画祭」が別府ブルーバード劇場などで開かれた。石橋さんと長年交流がある映画監督、阪本順治さんの発案。2日目には、石橋さん、阪本監督に加え、阪本作品に縁が深い藤山直美さんや岸部一徳さん、斎藤工さんが参加するトークイベントも開催。互いにけなし合って笑いを誘うなど、絶妙な掛け合いで観客約200人を沸かせた。
映画祭は12~14日に開催。阪本監督が昨年、劇場側に打診して実現した。阪本監督によると、それを聞きつけた岸部さんらが「僕も、私も」と手を挙げ、参加者が増えてしまったという。
トーク直前には、4人が出演する阪本作品「団地」(2016年)を上映。藤山さん、岸部さん演じる夫婦が息子の死をきっかけに団地での生活を始めるが、かつて営んでいた漢方薬局の常連客(斎藤さん)の登場などで意外な方向へ展開していく物語で、トークは「団地」の話題を中心に進んだ。
石橋さんは、大楠道代さん演じる奥さんには弱いが、外では威厳を保とうとする団地の自治会長をコミカルに演じている。ヤクザの親分など怖い役のイメージが強い石橋さんだが、この役を依頼した理由について阪本監督は「(普段の言動が)おかしい人なので、そういう姿を見ていると、おかしな人にしかキャスティングできない」と説明した。
具体的には、健康診断の数値を阪本監督が尋ねた際に「うん、高値安定」と返してくることや、外食で一升瓶からお酒をついでもらう際に瓶の底付近を無理やり持ち上げてお酒の量を増やそうとすることなどを挙げた。
一方、石橋さんも阪本監督について「(出演のたびに)お前どのくらい成長したか、見せろみたいな、人を評価しようとする」と話し、「だから演技どころでなく『阪本、この野郎』って感じでやっている」と応酬した。
岸部さんは、石橋さんの自治会長を「ああいう役をあんな風にできる人はいない。やっぱり蓮司さんはすごい」とほめた後に「これでいいですか」と確認して笑いを誘った。
石橋さんを「映画界の百科事典」と評した藤山さんは、阪本監督の代表作で別府市内の各所がロケ地として登場する「顔」(2000年)でも主演。当時を「毎日受験勉強している感じ」と振り返り、自転車の乗り方を学ぶシーンで、阪本監督に「バサって倒れてください」と要求された際に「こいつ、何考えているんかなあ、と思った」と明かした。
だが、指示通りにやって「これが正解だ」と実感した際に「気持ちが成仏した」との経験を話して石橋さんに同意を求めると「俺はそんなに単純ではない」とまぜ返した。
それでも石橋さんは昨年公開された「せかいのおきく」など阪本作品に出演し続ける理由について「こちらが全然想像してもいなかった世界を作るんだけど、それでいて現代とクロス(交差)する。ものの見方がとてもすてき」と明かし、「次回作も当然私空いてます」と出演を逆オファーした。【高橋慶浩】
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