江戸時代に長崎街道などを歩いて八代将軍徳川吉宗に献上された子ゾウの紙芝居「将軍さまと白象くん」の公演が28日、北九州市小倉北区の八坂神社境内であった。清の商人によりベトナムから渡ってきたゾウが1729(享保14)年4月28日、中御門天皇に披露されたことにちなむ「象の日」に合わせ、地元の紙芝居ボランティアグループ「令和はくぞう座」が企画した。
「むかーしむかし、二百何十年ものむかーし、僕は広南という遠い国から、中国の船に乗せられて、日本の長崎という所に着きました」。雄雌2頭のゾウは広南(現ベトナム中部)から船で長崎に到着。雌はすぐに死んでしまったが、当時7歳だった雄は長崎街道の木屋瀬宿(八幡西区)や常盤橋(小倉北区)を歩き、関門海峡を船で渡るなどして江戸に向かった。大きな話題となった道中と、21歳で死ぬまでを描いた26枚の大型紙芝居(横約60センチ、縦約44センチ)が、セリフや音楽に合わせテンポ良く引き抜かれた。
随所でゾウの人形や演者が紙芝居を飛び出すようにしてパフォーマンスを披露。約20分間の公演は、ベトナムの民族衣装に身を包んだ柴山品子さん(85)が「街道はむかーしから、白象くんのように、いろんな人や動物が目的を持って歩いた歴史と夢の道なんよ……」と締めくくり、観客から大きな拍手が送られた。
「令和はくぞう座」は、長崎街道の歴史を後世に伝えようと北九州市内に住む60~80代の男女14人で活動している。前身の「はくぞう座」は2008年に結成し、メンバーだったデザイナーの橋本賢作さん(故人)作の紙芝居を、市内外の小学校などで約120回披露してきたが、高齢化などで19年に解散。新たにメンバーを加えて再結成し、約4年半ぶりとなるこの日の公演に向けて3月から練習を重ねてきた。
代表の古賀えみ子さん(74)は「北九州にはさまざまな歴史があるが、動物を主役にしたものは珍しい。子どもたちに、郷土の歴史に興味を持ってもらい、命の大切さも考えてもらえたら」と話した。今後は市民センターなどでの公演を予定しているという。問い合わせは一般社団法人北九州シニア応援団(093・965・6080)。【成松秋穂】
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