県民のために日夜活動し、優れた功績を挙げた消防士を表彰する「県民の消防士」。
2024年度に選ばれた鯖江・丹生消防組合消防本部の水野建慶消防司令を紹介します。
        
訓練に励む消防士たちを指揮するのは、鯖江・丹生消防組合消防本部の水野建慶消防司令(51)です。2023年から丹生分署の副分署長として、越前町内の消防業務全体をとりまとめています。
 
鯖江丹生消防組合の木原彰宏消防司令は「すごく明るくて、若い職員のことも含めていろいろ見て声掛けもしてくれるので、プライベートな話も含めて話しやすい素敵な人。大好きな上司です」と話します。
 
物心ついた頃から、人を助ける仕事に憧れていた水野さん。「消防士になる」と決意したのは高校生の頃で、1992年にその夢を叶えました。
  
水野さんは消防士になって初めての火災現場のことを、今でも鮮明に覚えていると言います。「初めて出動した火災現場が1人が亡くなってしまうという悲惨な現場だった。目の当たりにするとかなりショックだった。二度とこのような悲惨な火災を発生させないよう活動していきたいと思った」と決意を新たにし、以来「一人でも多くの命を救いたい」という思いを胸に32年間駆け抜けてきました。
   
その中で、大きな災害も経験しました。2004年7月に発生した福井豪雨です。
 
当時、水野さんは被害が甚大だった鯖江市河和田地区の北中山分遣所で勤務していました。「早朝からかなり強い雨が降っていたのを覚えている。一面が濁流となっていて、見渡す限り茶色という状態。どこに要救助者がいるのかわからない、自分たちもどのように活動すればよいのか判断に迷うような状態だった」と振り返ります。
  
暗中模索で活動する中、水野さんは1人のお年寄りを命の危機から救いました。幹線道路が川となっている状態で、消防車で調査活動をしていたところ、高齢の女性が街路樹に捕まって助けを求めていました。すぐに声をかけ、消防車に乗せて高台まで避難。女性を救助した場所は、まもなく水かさが増し濁流となったそうです。
  
豪雨では、水野さんの自宅も床上浸水しました。「浸水するのは覚悟していたが、当時は子供も0歳と4歳と小さかったので、自分が守ることができない歯がゆさと、家族に『頼むからあとは任せた』という気持ちで活動していた」と話します。
 
自らも被災しながらも、救助の最前線に立ち続け、地域住民の被害軽減のために力を尽くしました。このときの経験は、水野さんの気持ちに大きな変化をもたらしました。「自宅の状況を見たときに、やるせなさや無力を感じた。被災者はそういう思いを持っているということを肝に銘じながら活動ができるようになった」と水野さんは語ります。
 
消防士になって32年。あらゆる現場で培ってきた経験と技術で、水野さんは「消防の中でもいろんな職種を経験してきたので、そういった経験を踏まえ後輩に伝えていけたらと思う」と話を締めくくりました。
 
県民の消防士の表彰は11月25日(月)に福井テレビで行われます。

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