秋田県小坂町の観光施設に保存されている寝台特急「あけぼの」への宿泊が4日、5年ぶりに再開される。修繕費の一部はクラウドファンディング(CF)で集めており、施設の鈴木二朗園長(60)は「乗客らの思い出が何万人分も詰め込まれている。今の車両にはない雰囲気を感じて」と話している。

「あけぼの」は1970年に運行がスタート。青森―上野間を日本海側を経由して約12時間半で結んだ。小坂町がある秋田県北部と東京を直結するため上京時に利用する住民も多かったというが、2014年に定期運行を終了した。

車両を管理するのは小坂町も運営に参画する観光施設「小坂鉄道レールパーク」だ。施設は14年に開業したが、町は運行を終えた車両を宿泊施設に再利用したいと考え、JR東日本に譲渡を依頼。譲渡が決まり、16年から宿泊営業を始めた。

宿泊部屋の毛布や枕、カーテンは運行時のものが使われており、当時の雰囲気を感じられる。運転可能な状態で保存しながらの宿泊営業は全国的に珍しく、年間約2000人が宿泊してきた。

しかし、新型コロナウイルス流行に伴い20年から休業。施設は22年に営業再開したが、宿泊は中止が続いた。時間の経過で塗装の剥がれが目立つようになった車体。「このまま駅で朽ちてしまうのかな」。鈴木園長の頭には不安もよぎった。

ただ、「ブルートレイン(寝台特急)をなくしてはいけない」という町の思いは強く、町は修繕費用の一部をふるさと納税型のCFで募ることを決定。23年10月の開始から1カ月で目標額の350万円を達成し、年末の終了までに約600万円を集めた。鈴木園長は「応援してくれる人が多くいることを改めて感じた」と振り返る。

予約受け付けは4月20日に始まったが、わずか2日後には夏休み期間分がほぼ満室になった。「夜に明かりがともった様子はまるで現役」と語る鈴木園長。「再開は奇跡。ありのままの姿を見てほしい」と期待を膨らませている。

寝台特急「あけぼの」と「小坂鉄道レールパーク」の鈴木二朗園長=4月22日、秋田県小坂町

寝台特急「あけぼの」の客室=4月22日、秋田県小坂町

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